環境に関わる責任生物多様性の保全

自社林の生態系の保全や自社の資源と技術を活かした活動を展開しています

基本的な考え方

基本方針のもと活動しています

日本製紙グループの取り組み
日本製紙グループの取り組み

日本製紙グループの事業活動は、生物多様性を育む森林に大きく依存していると同時に、さまざまな影響を与えています。森林を持続可能な形で活用していくことが、事業の存続・発展の基盤です。当社グループでは「環境憲章」の理念に「生物多様性に配慮した企業活動」を掲げています。さらに2016年4月には「生物多様性保全に関する基本方針」を新たに策定し、取り組みを推進しています。

本業を通した取り組み

豊かな森林を未来に伝えていきます

当社グループは、持続可能な森林経営のなかで自社林の生物多様性調査などを実施しています。生産工程でも、排水処理や温室効果ガスの排出抑制など生物多様性に与える影響の低減に努めています。

生物多様性保全に関する基本方針
(2016年4月1日制定)

理念

日本製紙グループは、森林資源を事業基盤とする企業グループとして、生物多様性が生み出す自然の恵みに感謝し、生物多様性の保全を通じて生態系サービスを享受し続けることができる持続可能な循環型社会の構築を目指します。

基本方針

  1. 1.生物多様性の保全を重要な社会課題と位置づけ、生態系サービスの持続可能な利用と事業活動との調和に努めます。
  2. 2.国境を越えた生態系サービスの利用が生物多様性に与える影響をサプライチェーンマネジメントを通じて認識し、その利用を適切に管理します。
  3. 3.リサイクルおよび省資源に積極的に取り組むことにより、環境負荷が生物多様性に与える影響の低減に努めます。
  4. 4.生物多様性の保全と生態系サービスの持続可能な利用に貢献する技術、製品、サービスの開発を推進します。
  5. 5.生物多様性に関する社員の意識の向上に努め、ステークホルダーと連携して生物多様性を育む社会づくりに貢献します。
自社林における生物多様性を保全する仕組み
森林の生物多様性を保全する仕組み
事例

シマフクロウの生息地保全と事業の両立~(公財)日本野鳥の会との協働

日本製紙(株)は日本野鳥の会と、2010年に野鳥保護に関する協定を締結し、北海道根室地方の社有林約126ヘクタールをシマフクロウの保護区に指定しました。この保護区内には3つがいのシマフクロウの生息が確認されています。
また、2015年5月には北海道釧路地方の社有林におけるシマフクロウの生息地の保全と事業の両立に関する覚書を締結しました。目的意識を共有した相互信頼のもと、協働での調査をした上で保護区は設置せず、生息地・繁殖環境を保全しつつ木材生産を続ける施業の方法と時期の基準に合意しています。

  • この覚書の取り組みは、国連生物多様性の10年日本委員会の「生物多様性アクション大賞2015」に入賞しました
日本野鳥の会との調査
実施年度調査内容
2010 シマフクロウのすみかとなり得る巨木の調査
2011 鳥類生息状況調査
2012 オジロワシやオオワシのねぐら調査、夜行性鳥類音声調査
2013 哺乳類、シマフクロウの生息状況調査
2014 シマフクロウの行動圏調査
2015- シマフクロウの生息状況調査、鳥類生息状況調査
シマフクロウ

(提供(公財)日本野鳥の会)

シマフクロウ

全長70~80cm、体重3~4.5kg、翼を広げると180cmにもなる世界最大級のフクロウです。かつて日本では、北海道全域に1,000羽以上が生息していましたが、現在は道東部を中心に約70つがい、160羽が確認されるのみになりました。1971年に国の天然記念物に指定され、環境省のレッドリストで絶滅危惧IA類(CR)に指定されています。

海外における生物多様性調査の実施(ブラジル アムセル社、チリ ヴォルテラ社)

アムセル社(ブラジル・アマパ州)は、約30万ヘクタールに及ぶ社有地のうち18万ヘクタールを保護区としています。
ヴォルテラ社(チリ)は、約1万9千ヘクタールの社有地のうち約5千ヘクタールを保護林に設定しています。
いずれの保護地域とも多くの野生動植物が生息しており、希少種・絶滅危惧種を含む保護価値の高い森林です。両社ともに、生物多様性の確認のために生息調査などさまざまな取り組みをしています。

南米植林会社での取り組み
活動内容
アムセル社
定期水質検査 植林地内に水質・水位モニタリング設備を設置し定期的に検査
野生動物放野プログラムへの協力 国立再生可能天然資源・環境院が実施している野生動物放野プログラムへ保護区を毎年提供
パラ連邦大学生物学部との活動 生物学部と植林地などで哺乳類の生息調査を共同で実施後、アムセル社がモニタリングを継続中
生態学研究所と2016年から植林地の近接水域で魚類の生息状況を継続的にモニタリング
アマパ州環境研究機構との活動 保護区域内の植生調査で分布や保全状態を確認
ヴォルテラ社
自社保護林内の動物調査 定点カメラなどを設置し、ピューマをはじめ哺乳類・鳥類の生息を確認。2017年調査では準絶滅危惧種(NT)に指定されているプーズー(Pudu puda)ほか数種の希少動物の存在を確認
定期的河川調査 森林施業が生態系に与える影響を調べるため、自社植林地内の川の水質および生物多様性を定期的に調査
アムセル社での取り組み
野生動物のモニタリング

野生動物のモニタリング

植生調査

植生調査

ヴォルテラ社での取り組み
プーズー(準絶滅危惧種(NT))

プーズー(準絶滅危惧種(NT))

水質調査

水質調査

自社の資源や技術を活かす取り組み

さまざまな植物種の保全に貢献しています

独自技術の活用

写真

日本製紙(株)は、自社独自の挿し木技術を用いて貴重な植物の保全に貢献してきました。これは、光合成が旺盛になる環境を整え植物の発根を促進することで、従来の方法では根を出させることが困難だった植物でも苗木が生産できる技術です。この技術の活用により、絶滅危惧植物や日本各地に伝わる桜の名木など多くの植物の後継木が育っており、生物多様性の保全だけでなく、歴史や文化の保全にもつながっています。

事例

「シラネアオイを守る会」の活動支援

シラネアオイの種子を採取

シラネアオイの植栽

「シラネアオイを守る会」は、群馬県の絶滅危惧II類に指定されているシラネアオイを保護するために、群馬県立尾瀬高等学校と群馬県利根郡片品村が中心となって2000年12月に発足しました。2014年4月にはこれまでの功績が認められ、『「みどりの日」自然環境功労者環境大臣表彰』を受賞しています。
日本製紙グループでは、同会の設立当初から、地元で日本製紙(株)の菅沼社有林を管理する日本製紙総合開発(株)が運営面で支援し、シラネアオイの群生復元のために社有林の一部を開放しています。2002年からはグループ従業員のボランティアが、植栽や種子採取補助などの作業活動に参加しています。