社会への責任生物多様性保全への取り組み

森林を直接活用する日本製紙グループの事業活動は、生物多様性を育む森林に大きく依存していると同時に、さまざまな影響を与えています。森林を持続可能なかたちで活用し、豊かな森林を未来に伝えていくことは、事業の存続・発展の基盤となる取り組みです。

日本製紙グループ 生物多様性保全に関する基本方針

日本製紙グループの事業活動は、生物多様性を育む森林に大きく依存していると同時に、さまざまな影響を与えています。森林を持続可能なかたちで活用していくことが、事業の存続・発展の基盤です。当社グループでは「環境憲章」の理念に「生物多様性に配慮した企業活動」を掲げています。さらに2016年4月には「生物多様性保全に関する基本方針」を新たに策定し、取り組みを推進しています。

生物多様性保全に関する基本方針

生物多様性保全に向けた取り組みの概要

環境憲章の理念を実践するにあたっては、生物多様性に配慮した森林経営や持続可能な原材料の調達など「本業を通した取り組み」と、独自技術を活用した絶滅危惧種の保全や社有林を活用した活動など「自社の資源や技術を活かす取り組み」を2つの柱として、さまざまな活動を進めています。

生物多様性の保全に向けた取り組みの概要

本業を通した取り組み

(1)生物多様性に配慮した森林経営

日本製紙(株)は、日本国内に約9万ヘクタールの社有林と海外に約8.9万ヘクタールの植林地を有し、合計で約17.9万ヘクタールの森林を管理しています。それらの森林を、生物多様性に配慮し持続可能なかたちで経営していくことは、当社の社会的責任のひとつです。
持続可能な森林経営を実践する上で重要となるのは、適切な計画と管理です。木を育てるには長い年月が必要です。植林する面積、伐採する面積、木の生長する速度、周辺環境や社会への影響などさまざまな条件を加味した計画が不可欠です。また、水辺林の保全などランドスケープも考慮する必要があります。日本製紙グループでは、これまで培ってきた経験をもとに、適切な計画と管理を進めています。

また、国内社有林の約20%にあたる1.8万ヘクタールを、木材生産目的の伐採を禁止して地域の生態系や水源涵養などの環境機能を保全する「環境林分」に指定しています。海外でも、ブラジルのアムセル社では、保有面積の55%にあたる17万ヘクタールを保護地域とするなど、保全する地域を明確にして生物多様性の保全に配慮しています。

(2)生物多様性に配慮した原材料調達

日本製紙グループでは、生物多様性に配慮した木質原材料調達に取り組んでいます。
2005年10月に制定した「原材料調達に関する理念と基本方針」では持続可能な森林経営が行われている森林からの調達を掲げており、2006年8月にはアクションプランを制定し、理念と基本方針の実践に努めています。

責任ある原材料調達

(3)生産活動での環境負荷低減

日本製紙グループは、生物の多様性保全に配慮して、工場から排出する水をできる限りきれいにして自然に返す、温室効果ガスの排出を減らして地球温暖化を防ぐなど、生産活動にともなう環境負荷の低減に努めていきます。                                                                                                    

                                                    
                                                    

                                                    
                                                    

森林の生物多様性を保全する仕組み

自社の技術や資源(社有林)を活かす取り組み

(1)自社の技術を活かす取り組み

自然界の植物は、太陽の光を浴び、炭酸ガスと水から生長に必要なエネルギーをつくり出す光合成を行っています。日本製紙(株)は、植物の生きる仕組みである「光合成」を「挿し木」に応用した「容器内挿し木技術」を開発し、絶滅危惧植物や歴史的に価値のある希少な植物の保全に貢献しています。

容器内挿し木技術とは

事例1 絶滅危惧種の保護・育成

オガサワラグワの原木
オガサワラグワの原木

日本製紙株式会社は、社団法人林木育種協会などからの依頼で、独自技術である「容器内挿し木技術別ウィンドウで開きます」を使って、主に明治以降の乱伐により数が激減したオガサワラグワの苗木の増殖に成功しました。
シマグワとの交雑のため、純粋種の入手が難しく増殖が困難なオガサワラグワは、鳥類の絶滅危惧種であるアカガシラカラスバトの食餌植物であることからも、大変貴重な植物であるとされています。
また、同様に小笠原諸島の固有種で絶滅危惧種1A類に分類されているコバトベラ、セキモンノキについても増殖に成功し、苗木を小笠原諸島に戻しています。

事例2 桜の種の保全

鹽竈桜
鹽竈桜

桜は日本国内で広く国民に親しまれ、各地には歴史的に意義のある桜が存在しますが、一方で寿命により枯れかけているものも少なくありません。
当社グループは、日本製紙株式会社が開発した独自技術、「容器内挿し木技術別ウィンドウで開きます」を用いて、このような歴史的または学術的に価値の高い桜の保護活動を行っています。
これまで行われてきた接ぎ木では、接合部からの雑菌の侵入や台木との融合などの問題によって寿命が短くなることが懸念されていました。しかし、挿し木によって直接発根させて苗木をつくる当社の方法では、長寿が期待できるとともに、母樹の形質を継承することができます。
これまでに、鹽竈桜(鹽竈神社/宮城県塩釜市)、波々迦木(和名:ウワミズザクラ、葛木坐火雷神社/奈良県葛城市)の保存に努めたほか、2006年からは大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所(静岡県三島市)が保有する、由緒ある桜や花の色が珍しい桜など、260種類にもおよぶ日本の桜の貴重な遺伝資源を後世に伝えるため、「容器内挿し木技術別ウィンドウで開きます」を活用してそれらの桜の後継木の育成に取り組んでいます。

また、京都市の鈴馨山真正極楽寺(れいしょうざんしんしょうごくらくじ 通称:真如堂)にある「たてかわ桜」は、樹齢300年以上、直径1メートルもある巨樹で、1959年の伊勢湾台風で倒木したものの、数年後、折れた幹から芽が吹き出し、花を咲かせるまでに回復していました。しかし近年、樹勢が衰えていたことから、後継木の育成が検討されました。日本製紙(株)は、「容器内挿し木技術」を活用して後継木の育成に取り組み、2013年11月に約1メートルに育てた「たてかわ桜」の苗木を真如堂に返還しました。
桜の保全活動
<関連するニュースリリース>
国立遺伝学研究所で保存されている貴重な桜
手弱女(タオヤメ)

手弱女(タオヤメ)

来迎寺菊桜(ライコウジキクザクラ)

来迎寺菊桜(ライコウジキクザクラ)

市原虎の尾(イチハラトラノオ)

市原虎の尾(イチハラトラノオ)

事例3 干潟の再生

製紙工程では、紙にできなかった微細繊維などから成るペーパースラッジを燃料として利用するだけでなく、燃焼後に発生するペーパースラッジ灰を有効利用するさまざまな取り組みを進めています。

日本製紙(株)八代工場は、熊本大学、(株)福岡建設と共同で、航路の浚渫土砂やペーパースラッジ灰※などの廃棄物を有効活用した環境材料を開発し、八代港の一角で干潟を再生する実証実験を行いました。2013年2月に造成した干潟の実証試験では、約半年でカニや二枚貝など約30種類の生物が確認され、生物多様性保全・再生の効果が明らかになってきました。

                                                    

                                                    

干潟再生実証試験の様子

干潟再生実証試験の様子

(2)社有林を活用した取り組み

事例1 シマフクロウの保護活動

シマフクロウは、翼を広げると180cmにもなる世界最大級のフクロウです。かつては北海道全域の森に生息していましたが、現在では北海道東部を中心に約50つがい140羽が確認されるのみになり、その保護への取り組みが求められていました。

日製製紙(株)は2010年10月に日本野鳥の会と野鳥保護に関する協定を締結し、北海道根室地方の社有林約126ヘクタールをシマフクロウの保護区に指定しました。この保護区内には3つがいのシマフクロウの生息が確認されており、その生息状況調査を継続的に行っています。
また、2015年5月には北海道釧路地方の社有林におけるシマフクロウの生息地の保全と事業の両立に関する覚書を締結しました。2011年に同林内の間伐跡地でシマフクロウの繁殖が初めて確認されたことから、2014年に繁殖期のシマフクロウの行動圏を把握する調査を日本野鳥の会と協働で実施しました。根室地方での協働活動からも、絶滅危惧種保護の重要性と双方の立場についての理解と信頼関係の醸成が進んでいたため、野鳥保護区は設置せず、通常の木材生産のための施業を行いながら、シマフクロウの生息地保全や繁殖に与える影響を回避した施業の方法、時期の基準について合意しています。
今後、日本野鳥の会の知見を参考にしながら、持続可能な森林施業のさらなる充実を図っていきます。

シマフクロウ 写真提供:(公財)日本野鳥の会
シマフクロウ 写真提供:(公財)日本野鳥の会    
   
この覚書の取り組みは、国連生物多様性の10年日本委員会の「生物多様性アクション大賞2015」に入賞しました。
                         生物多様性アクション大賞                                   

事例2 シラネアオイを守るボランティア活動

シラネアオイ
シラネアオイ

「シラネアオイを守る会」は、絶滅危惧II類に指定されているシラネアオイを保護するために、群馬県立尾瀬高等学校と群馬県利根郡片品村が中心となって、2000年12月に発足しました。2014年4月にはこれまでの功績が認められ、『「みどりの日」自然環境功労者環境大臣表彰』を受賞しています。
日本製紙グループでは、同会の設立当初から、地元で日本製紙(株)の菅沼社有林を管理する日本製紙総合開発(株)が運営面で支援し、シラネアオイの群生復元のために社有林の一部を開放しています。2002年からはグループ従業員にボランティアを公募し、植栽や種子採取補助などの作業活動に参加しています。

シラネアオイの種子を採取

シラネアオイの種子の採取

清掃活動

清掃活動

登山道の整備

登山道の整備

事例3 生物多様性調査の実施(ブラジル AMCEL社、チリ Volterra社)

アムセル社(ブラジル・アマパ州)は、約31万ヘクタールに及ぶ社有地のうち17万ヘクタールを保護区としています。 ヴォルテラ社(チリ)は、約1万9千ヘクタールの社有地のうち約5千ヘクタールを保護林に設定しています。両方の保護地域には多くの野生動植物が生息しており、希少種・絶滅危惧種を含む保護価値の高い森林です。両社ともに、生物多様性の確認のために生息調査などさまざまな取り組みをしています。

                                                  

アムセル社

● 定期的水質検査 -植林地内に水質・水位モニタリング設備を設置し定期的に検査

● 野生動物放野プログラムへの協力 -国立再生可能天然資源・環境院が実施している野生動物放野プログラムへ保護区を毎年提供

● パラ連邦大学生物学部との活動 -植林地などで哺乳類の生息調査を共同で実施後、アムセル社がモニタリングを継続中

● アマパ州環境研究機構との活動 -保護区域内の植生調査で分布や保全状態を確認

● アマゾン連邦農業大学との活動(2011~2012年) -同大学の協力を得て、植林前の熱帯サバンナ地域で基礎的な植生情報を収集、25目14科の植物を観察

● 特定保護区の大型・中型哺乳類生息調査(2011~2013年) -植林地に近接する自然保護区内の8つのコミュニティを対象に、目撃情報などのアンケートと獣道・糞・足跡などの調査を実施。準絶滅危惧種(NT)に指定されているジャガーなどの生息を確認

動物調査の様子

動物調査の様子

                                                

ヴォルテラ社

● コンセプシオン大学との活動 -社有地での生物多様性調査を実施、2013年調査では絶滅危惧種(EN)に指定されているチリ松(Araucaria araucana)を含む希少植物を確認

● 自社保護林内の動物調査 -定点カメラなどを設置し、ピューマをはじめ哺乳類・鳥類の生息を確認。2015年調査では準絶滅危惧種(NT)に指定されているプーズー(Pudu puda)ほか数種の希少動物の存在を確認