2000年2月24日

低温貯蔵法により、植林用クローン苗の計画生産に成功

日本製紙株式会社

香川大学農学部(田中道男教授)と日本製紙株式会社は、製紙原料として優れているユーカリの培養組織を低温で長期間貯蔵する技術を開発して、植林用クローン苗を安価に計画的に大量生産することに成功した。

組織培養法は、挿し木ができない樹種でも高効率にクローン苗を生産できる優れた方法である。しかし、培養植物は常に生長・増殖を繰り返しているため、約4週間ごとに無菌的に新しい培地に植え継ぎながら増やしていかなければならない。また植林事業では、おおむね3ヵ月間の植栽時期に植え付けを完了させるため、この期間に合うよう高品質で均一な植林用苗を数百万本単位で準備し供給する必要がある。このため、これまでの培養方法では長期に膨大な人手とそれにともなう設備が必要で、クローン苗の生産コストを引き上げる要因となっていた。

共同研究では、培養で得られた組織を順次低温下で貯蔵しておき、必要なときにあたかも種子のように必要なだけ取り出し、再培養して短期間にクローン苗を計画的に生産する技術を開発した。長期間植え継いで増やす必要がないとともに、培養組織を6ヶ月以上長期貯蔵できるため、貯蔵・再培養など増殖作業を年間を通じ行え、労働力は従来の1/5ですむことになる。
具体的には、増殖生長している緑枝(シュート(約5cm長))を貯蔵用培養液の入っている封筒型容器(10×15cm・ガス透過性フッ素樹脂フィルム製)に約50シュートを入れ、4~10℃の低温で貯蔵する。貯蔵組織は必要に応じて取り出し、増殖培地に移すことで貯蔵1シュート当たり約10本以上のシュートが形成され、これを切り取り発根させることで苗が生産できる。

日本製紙では、これまでに開発してきた組織培養による林木の大量増殖技術、炭酸ガス施用の光独立栄養培養法による発根、そして今回開発した低温貯蔵技術の3つのコア技術で、コマーシャルベースで採算性のある植林用クローンの苗生産システムが完成できたと考えている。今年6月開設の当社オーストラリア植林研究施設でこの実証試験を行い、4~5年後の事業化をめざす。

 
以上