2002年3月8日

耐塩性組換えユーカリの開発に成功
~塩害地域に植林の可能性も~

日本製紙株式会社

日本ユニパックホールディンググループの日本製紙は、遺伝子組換え技術により耐塩性遺伝子を組み込んだ「耐塩性組換えユーカリ」の開発に成功した。この組換えユーカリは海水の約1/3濃度の塩化ナトリウムを与えた環境下でも生育する。

アカザや大麦などの耐塩性を持つ植物はアミノ酸の一種であるベタインを大量に細胞内に蓄積し、浸透圧のバランスをとることで高塩濃度ストレスから細胞を守ることが知られている。植物では2段階反応でコリンからベタインが合成されるが、国立基礎生物学研究所(愛知県岡崎市)の村田教授は、1段階反応でベタインを合成するコリンオキシダーゼ(codA)遺伝子を土壌細菌Arthrobacter globiformis(アルスロバクター・グロビフォルムス)から分離し、この遺伝子を導入したシロイヌナズナとイネで耐塩性が向上したことを報告している。

日本製紙では「MATベクターシステム」を用いてcodA遺伝子をユーカリに導入し、「耐塩性組換えユーカリ」の開発を試みた。MATベクターシステムは、抗生物質耐性遺伝子を用いずに組換え体を選抜できる環境負荷の少ない組換え技術である。この技術を用いてcodA遺伝子を導入した組換えユーカリは200mM塩化ナトリウム(海水の約1/3濃度)を含む培地上で生育し、耐塩性を示した。

塩害、砂漠化などにより引き起こされる土壌劣化は急速に進んでおり、世界的に大きな問題となっている。遺伝子組換えにより耐塩性を付与した樹木は、塩濃度が高く植物が生育できなくなってしまった土地に植林の可能性を与える。今回開発した耐塩性組換えユーカリは、耐塩性の他に高温あるいは低温などの環境ストレス耐性を示すことが期待されている。今後、土壌での耐塩性試験およびその他の環境ストレスに対する耐性試験を行うとともに組換え体の安全性評価試験を行っていく予定である。

200mM塩化ナトリウム(海水の約1/3濃度)を含む培地での生育状況
非組換えユーカリ 耐塩性組換えユーカリ
非組換えユーカリ 耐塩性組換えユーカリ

 
以上