2003年11月7日

製紙工場排水からバイオマス燃料を製造
~国内初のクラフトパルプ製造工程排水の実証プラントを設置してメタン発酵を研究開発~

日本ユニパックホールディンググループ
日本製紙株式会社

日本ユニパックホールディンググループの日本製紙(社長:三好孝彦)は、国内で初めてとなるクラフトパルプ製造工程排水のメタン発酵(注1)の技術開発に着手します。本技術開発では、排水からメタンガスを得る技術を確立させるとともに、従来型排水処理設備に要していたエネルギーを削減することで、エネルギーの使用合理化をめざします。
期間は平成15年度から平成17年度の3年間で、今年度はパイロットプラントを用いて臭気成分除去や発酵阻害物質についての研究を行います。さらに来年度からは、これらの研究に加え実用化に向けた実証試験を行う予定です。

製紙工場には、低濃度の有機分を含むクラフトパルプ製造工程の排水があります。この排水は微生物を用いた生物的処理や、薬品を使用した化学的・物理的処理により、きれいにしています。しかし、これらの方法は単に排水を処理するだけのものであり、メタン発酵などのように排水を有効利用しているわけではありません。メタン発酵は、通常は高濃度の有機分を含む排水を処理しており、また処理と並行して燃料となるメタンを生成することができるため、これまで食品業界や下水処理業界などの排水処理で数々の実績があります。しかし、今回のような低濃度の有機分(化学的酸素要求量で約1,000mg/L)しかない排水を効率的に処理できるメタン発酵技術および設備はありませんでした。

今回の技術開発の実証プラントとして、勇払工場(北海道苫小牧市)に次世代型のメタン発酵設備の導入を予定しています。これにより従来排水処理に要していたエネルギーを削減でき、また生成されるメタンはバイオマス燃料として、場内で使用される化石燃料の一部を代替することが可能となります。これらを総合して約1千キロリットルの重油(換算値)が削減可能であり、地球温暖化ガスである化石燃料由来の二酸化炭素を年間約3千トン削減することができます。なお、この開発事業は、経済産業省の「エネルギー使用合理化黒液濃縮水メタン発酵技術開発」補助事業として、本年度約2億円の補助金交付を受けています。

(注1)メタン発酵:
  酸素の限られた、または酸素の無い条件下で、細菌の働きによって有機物を分解し、メタンを生成する発酵方法。なお、一般家庭で使われている都市ガスの主成分はこのメタンである。

 
以上