2005年10月28日

耐塩性遺伝子組換えユーカリの栽培試験を実施
~筑波大学と共同で、樹木では国内初の野外栽培~

日本製紙株式会社

日本製紙(社長:中村雅知)は、独自の遺伝子組換え技術で開発した耐塩性ユーカリの野外での栽培試験を、筑波大学遺伝子実験センター・隔離ほ場において本年10月から開始しました。
栽培期間は2009年末までを予定しており、屋外環境での生育状態、耐塩性や周辺環境への影響などを評価します。
なお、遺伝子組換え樹木の野外での栽培は、日本国内で初めてになります。

耐塩性ユーカリには、自然科学研究機構基礎生物学研究所が分離した土壌細菌の遺伝子「コリンオキシダーゼ」を、日本製紙独自の技術であるMATベクター※1を用いて導入し、塩分濃度が高い環境においても、細胞が脱水状態とならないようにしました。この遺伝子組換えユーカリは、海水に相当する濃度の3分の1程度の塩水を1ヵ月与え続けた温室実験の結果、すでに耐塩性が確認されています。その後、つくば市周辺の植生調査を財団法人地球環境産業技術研究機構の協力で実施し、本年3月に文部科学省と環境省の両省に野外実験の申請を行い、10月12日に両省から承認を受けました。

今回、野外試験を行う隔離ほ場は、筑波大学キャンパス内にあり、高さ2メートルのフェンスで囲まれ、不審者の侵入を防ぐ目的で監視カメラが設置されています。ユーカリは国内に在来近縁種がなく、周辺植物との交配の可能性はほとんどありません。さらに今回の栽培では、花芽が出た際は切除し花粉や種子の飛散などを防ぎます。

地球の温暖化に伴い、世界中で乾燥害や塩害が報告されています。耐塩性ユーカリは、乾燥した塩害地でも育成が可能であり、大気中の二酸化炭素の吸収源として、地球温暖化の防止に貢献することが期待されています。

※1 MATベクターシステム: 遺伝子組み換えの際に、不要な遺伝子を残さず、有用な遺伝子のみを組み込む技術

 
以上