2009年3月10日

無花粉スギの効率的な挿し木増殖に成功
~日本製紙独自の「光独立栄養培養技術」を活用して、苗木普及を加速~

株式会社日本製紙グループ本社

 当社グループの日本製紙株式会社(社長 芳賀 義雄)は、同社独自のバイオ技術を用いて、独立行政法人 森林総合研究所 林木育種センターが開発した無花粉スギ「爽春(そうしゅん)」を増殖することに成功しました。
 
 今日、スギ花粉症は国民病とも言われ、社会問題として解決策が求められています。そのような状況に対し、林木育種センターは無花粉スギの育種を進め、2004年1月に花粉をまったく作らない「爽春」を開発しました。
 「爽春」のように、スギ花粉症の克服のために新規開発された無花粉スギは、今後広く普及させ、実際に植林していくことが期待されていますが、そのためには、挿し木によって苗木を増殖する必要があります。これまでの挿し木方法では、小さくとも20cmほどの枝を挿し穂に用いるため、母樹から取れる挿し穂の数が限定されていました。そのため、開発されたばかりの品種を短期間に増やすことが困難とされ、増殖技術を確立し、供給量の増大を図っていくことが急務となっていました。
 
 今回成功に至った、日本製紙が独自に開発した「光独立栄養培養技術(注)」を用いた挿し木方法では、2cm程度の枝を挿し穂として利用することができるため、従来方法に比べて100倍近い挿し穂の数が得られ、非常に効率的な増殖が可能になります。この技術は林木育種センターにおいても有効性が確認されております。今後、無花粉スギの苗木を生産する他機関への技術供与などを積極的に行い、無花粉スギの普及に向けてこの増殖方法を広めていく考えです。
 
(注)光独立栄養培養技術
組織培養でエネルギー源となる糖の替わりに高濃度の二酸化炭素と水と光を施用することで、植物自身が持つ光合成能力を引き出す培養方法。この技術は、小笠原諸島の希少な固有種で絶滅危惧種に分類された植物や歴史的価値のある桜の名木の保存に活用されるなど、日本製紙グループが取り組む生物多様性保全の活動に生かされています。

 

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