1998年4月15日

ユーカリクローン苗の実用植裁実施について

日本製紙株式会社

日本製紙は、チリ共和国において、紙原料に有用な樹種「ユーカリグロブラス(Eucalyptus globulus)」のクローン苗の林地植栽を実施した。これは樹木を均一に育て、原料収穫の安定化を図るもので、実用のものとしては、世界で初めてである。また同時に、同国アウストラル大学で行われる、ユーカリの組織培養プロジェクトへの技術協力も開始した。
 
 
1.ユーカリグロブラスクローン苗の林地植栽
 
1997年11月、当社と当社出資のチリの現地法人ヴォルテラ社(Volterra S.A.)は、ユーカリグロブラスのクローン苗の林地植裁を開始し、半年が経過した現在、順調に生育を続けている。
当社は紙原料であるパルプ材を対象に、植林用クローン苗の生産方法を開発している。今回植裁した苗は、光独立栄養培養(注)を樹木に応用した当社独自の方法によりつくられたもので、これまで困難であったユーカリグロブラスのクローン培養を実現し、林地植裁にこぎ着けたこととともに、その原種が現地で選抜された個体であることから、生長性の面でもその推移が注目されている。ユーカリグロブラスのクローン苗の林地植裁は、実用段階では初めてのことで、今後の本格的クローン植林への第一歩になると考えている。
 
植裁地 : チリ共和国第8州(コンセプシオン南部)
植裁面積 : 1ha
今後の計画 : チリにおいては、段階的に植林面積を拡大するほか、他の当社植林地(トゥリーファーム)にも応用していく。
 
(注)光独立栄養培養
組織培養による実用的なクローン苗の生産方法。従来に比べ大幅な発根率の改善や、生産性の向上が可能となり、当社ではこれを応用し、ユーカリなどこれまで困難だった樹木のクローン増殖に成功した。
 
 
2.アウストラル大学へ技術援助
 
チリでは、以前からユーカリグロブラスを始めとする植林が大規模に行われているが、収穫量向上のためには、クローン苗による植林に期待が集まっている。しかしこれにはクローン苗の効率的な生産が不可欠であり、同国のアウストラル大学では1997年度より、組織培養によるユーカリグロブラスのクローン苗生産プロジェクトを発足させた。
このプロジェクトでは、当社の組織培養技術が評価され採用されたが、当社ではこの機会に、プロジェクトに関連し、アウストラル大学から研究者を招へいして技術研修を行うとともに、研究員を同大学に派遣して技術援助を行っている。この援助は今後も継続して行い、当社の技術がチリに根付き、同国の林業の発展につながることを期待するとともに、当社にとっては将来の資源の確保につなげていきたい。また今後、同様の培養技術の展開を世界各地に広げていきたいと考えている。
 
・これまでの技術協力実績
アウストラル大学から当社への招へい 1人 6カ月
当社からプロジェクトへの派遣 2人 各8カ月
 
・アウストラル大学組織培養プロジェクトの概要
目的 : ユーカリグロブラス精英樹の組織培養によるマイクロプロパゲーション
参加企業 :
 フォレストラル モンテアギラ
 フォレストラル ミニンゴ
 フォレストラル アンゴル
 フォレストラル ロス ラゴス
 フォレッサ
 ヴォルテラ(日本製紙現地植林会社)
内容・期間 :
 1996年~97年 第一期 技術定着と各社持ち込み資料の培養
 1998年~    第二期 組織培養苗の生産・販売

 
以上