ニュースリリーススギ特定母樹の大規模採穂園を造成~九州地区の社有林1.8万haで利用、主伐後の再造林に対応~

日本製紙株式会社
日本製紙木材株式会社

日本製紙株式会社(社長:馬城 文雄、以下「日本製紙」)と日本製紙木材株式会社(社長:藤澤 治雄、以下「日本製紙木材」)は、森林資源が豊富で、スギが多く利用されている九州地区における社有林の再造林に向け、スギ特定母樹(注1)からの挿し木苗を本格的に生産するため、大規模な採穂園の造成、早期増殖の取り組みを開始しました。日本製紙八代工場(熊本県八代市)が熊本県人吉市に所有する土地に、独自技術を用いて増殖に取り組んだスギ特定母樹の挿し木苗824本を植栽し、今後順次拡大を図りながら、2019年までに1万4千本の採穂園を造成します。来年から試験植林にも取り組みながら、2023年からは年間約28万本の挿し木苗を生産・出荷していく計画です。

日本国内の森林は、戦後に植林されたスギやヒノキなどの人工造成林が木材として利用可能な段階を迎えており、日本製紙が九州地区に所有する約1万8千ヘクタールの社有林も、同様に伐期を迎えた森林が年々増えています。日本製紙グループでは「持続可能な森林経営」をテーマに、伐採後の植林により森林の循環、齢級構成の平準化を図っておりますが、植栽する苗木を選定するにあたり、「森林の二酸化炭素の吸収作用の保全及び強化を図るためには、再造林の際、従来の種苗より成長にすぐれたものを広く利用していく」との国の方針に則り、スギ特定母樹を積極的に導入することとし、その苗木を増殖し安定的に確保していくことが極めて重要であると判断しました。

スギ特定母樹とは、成長に優れ、花粉量が少ないなど、国によって定められた基準を満たし、農林水産大臣により指定されるもので、九州地区では現在21系統登録されています。

日本製紙木材は、2015年に熊本県知事から認定を受け「認定特定増殖事業者」(注2)となり、国立研究開発法人森林総合研究所林木育種センター九州育種場より配布を受けたスギ特定母樹の増殖に取り組んできました。一般的な挿し木方法では配布本数以上の挿し木が困難で、増殖に時間がかかります。しかし、配布穂木を分割し、日本製紙の独自技術である「光独立栄養培養技術」(注3)を用いて発根を促進させた上で、挿し木をすることにより、スギ特定母樹の原種14系統、各10枝の合計140枝から、植栽可能な824本へ挿し木苗を増殖することができました。現在、本年配布を受けた残りの特定母樹7系統についても挿し木増殖に取り組んでいます。

今後は、日本製紙アグリ・バイオ研究所の技術支援の下、日本製紙木材が熊本県内の種苗生産業者の協力を得て、挿し木による独自のコンテナ苗(注4)生産を行います。需要動向に応じた増産、積極的な外販を進めることにより、社有林に限らない九州地区における苗木の安定供給、森林の確実な更新にも寄与していきます。

日本製紙グループは「木とともに未来を拓く総合バイオマス企業」として、今後も持続可能な森林経営を基に、バイオマス資源の有効利用により人々の豊かな暮らしと文化の発展に貢献する事業展開を進めていきます。


注1 特定母樹
「森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律(以下、間伐等特措法)」に基づき、森林のCO2吸収固定能力の向上のため、成長に係る特性に優れたものとして農林水産大臣により指定されたもの。特定母樹の指定基準としては、成長性(在来系統の概ね1.5倍以上)、雄花着生性(一般的なスギの花粉量のおおむね半分以下)及び、材質(剛性、幹の通直性)がある。

間伐等特措法の基本指針として、将来的な人工造林において必要となる種苗について、地域特有のニーズ等に応じたものを除き、特定母樹から採取する種穂により生産することが可能となるよう、その生産体制を整えることを目指すことが明記されている。

注2 認定特定増殖事業者
間伐等特措法の基本方針に定められた特定増殖事業の実施方法に関する事項に基づいて、成長に優れた種苗の母樹の増殖に関する計画(特定増殖事業計画)を作成し、都道府県知事の認定を受けた事業者。

注3 光独立栄養培養技術
組織培養でエネルギー源となる糖の替わりに高濃度の二酸化炭素と水と光を施用することで植物自身が持つ光合成能力を引き出す培養方法。

注4 コンテナ苗
容器の底面を開けるなどによって根巻きを防止できる容器に用土を入れ育成した苗。根がむき出しの裸苗に比べ、根鉢が付いているため、時期を問わず通年植栽が可能で、活着が良いことが特徴。そのため低コスト造林の手段として期待されている伐採・搬出作業と同時並行して地拵え・植栽を行う一貫作業システムに向いている。




造成したスギ特定母樹の採穂園



以上