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世界最小!レンガ型紙パック

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ミッションは、世界最小となる65mlパックを世に送り出すこと。
※所属・役職は取材当時のものです。

マーケットニーズを読み解く

長年、消費者に親しまれ、食卓に欠かせない存在となっている紙パックは、牛乳やジュースに使用される屋根型容器のエヌピーパックシリーズと、常温保存が可能な無菌充填包装のフジパックの2つに大別される。いずれも、安定需要はあるものの、無駄のない完成された形であるが故に、目に見えるイノベーションがもたらされることもなく、新規顧客の開拓には行き詰まりを感じていた。

NP-PAK 営業本部 営業第2部 課長  増田 順一
NP-PAK 営業本部 営業第2部 課長 増田 順一

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そこで試みられたのが、消費者のニーズから製品を企画するマーケティングの手法である。
プロジェクトの仕掛人となった営業担当、増田順一はこう振り返る。
「マーケティング会社に依頼した調査から改めて浮き彫りになったのは、少子高齢化という日本の現実でした。ただし、お年寄りが増えて子どもが減ることで、飲料に対する消費者の購買行動がどう変化するのか、という答えまでは調査で与えてはくれません。消費者は今、一体何を求めているのか?という命題に対して、自分たちで仮説を立て、切口を見いだす必要がありました。少子高齢化の時代に求められる飲料は何なのか。紙パック事業として、どういった施策を打ち出せるのか。そこで目を付けたのが少量容器の需要です。飲料を「喉が渇いた時にだけ飲む物」と捉えるのではなく「健康の維持・促進を目的とする、付加価値を加えた飲み物」と捉えることが、現代社会にマッチした考え方ではないかと考えたのです」(増田)。

少量紙パックの可能性

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お年寄りの声を聞くと、一般的な200mlや300mlのパックでは、1回で飲みきれない。当時の最小容器は100mlだったが、それすら飲み残してしまうという。
「飲みきれなかった場合にお年寄りが感じるのは、この程度も飲めなくなってしまったのか…という寂寥感だと言います。この『寂寥感』にヒントがありました。お年寄りに、もう一度飲みきれる『安心感』を与えるためにはどうするか?そこで、100mlよりもさらに小さい容器に可能性を感じました。今、世に存在しないのであれば、自分達の手で創りあげればいい。その先にいる消費者の笑顔を思い浮かべている中で考えつきました。そんな思い切った発想が、このミッションの根源にあると言えるのではないでしょうか」(増田)。
 また、地方在住者や歩行が困難になった高齢者は、食料品を買いだめする傾向にあり、長期常温保存できる商品が喜ばれる。
 こうして無菌充填のフジパックを改良した、世界最小65mlパック「ウルトラスリム」の開発に向け、プロジェクトチームが発足。紙パック事業の将来性を占う上でも重要な意味を持つ、新しい挑戦がスタートした。

プロジェクトリーダーの存在

ウルトラスリム開発チームに集められたのは、営業、技術、生産、企画、それぞれ部門の異なる総勢8名の面々。立場が違えば視点も違う。開発部の宮川茂和は、発足当時、このプロジェクトに対して半信半疑だったという。
「100mlより小さいと聞いたとき、一口二口で飲み終わってしまうような容器に、果たして本当にニーズがあるのかなと思いましたね。開発的な面からいっても、モノを小さくするということは、部品の改良はもちろん、小さくしても耐久性を担保させるなど様々な困難が伴います。率直に言って難しい話だと思いました」(宮川)。

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生産技術本部 商品開発部 部員 宮川 茂和

プロジェクトの成功には、同じ目標を見据えて、各担当者の思いを一つにすることが不可欠だ。時にはそれぞれの立場から意見が衝突し合うこともある。意思疎通をスムーズにするため、何度もディスカッションが重ねられたが、そこで活躍したのが、プロジェクトリーダーの存在だった。

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「今は退職されましたが、当時元商品開発部長で役職を降りていた方がその役を買ってでてくれました。経験が長い分、開発、技術、営業、いろいろな立場から物事を見てくれるので、非常にいい潤滑油になっていただきました。それぞれ能力の高いメンバーが集まっても、個々人がバラバラに動いては、いい成果は生まれません。旗ふり役のリーダーのもと、チームとして全員がうまく機能したことが今回の成功に繋がったのだと思います」(増田)。

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