2003年12月11日

タスマニア州の原生林保護に関心を持たれている皆様へ

日本製紙株式会社

このたび、グリーンピース・ジャパン、およびオーストラリアのウィルダーネス・ソサエティから、オーストラリアのタスマニアで行なわれている森林伐採は保護価値の高い広大な森林地域の破壊を引き起こしており、この保護価値の高い森林からの木材チップ購入を停止するよう、当社に要望をいただきました。
グリーンピース・ジャパンは、ホームページ(http://www.greenpeace.or.jp/ 外部リンク)においても、「タスマニア~紙に変わる原生林~」として森林キャンペーンを掲載しています。
また、このキャンペーンに賛同する5000人以上の方から抗議のメールをいただきました。
 
当社は、資源循環型社会の形成に向け、「自然と調和する持続可能な企業活動」を基本理念に事業活動を行い、「持続可能な森林経営」が行われている森林から資源調達をするよう努めています。
2003年8月には、環境憲章の第3回改定を行ない、
・ 10万ヘクタール以上を目標とする海外植林事業「Tree Farm構想」
・ 輸入広葉樹チップ全量の「森林認証取得森林」または「植林地」からの調達
などの2008年達成を掲げ、より一層環境との共生を重視した原料調達を進めています。
当社は、タスマニアから年間約160万トンのチップを輸入し製紙用原料として使用しており、タスマニアの森林資源の管理については、強い関心を抱いています。
 
当社は、問題となっているタスマニアの森林伐採につきまして、タスマニア州政府、Gunns社、および当社のオーストラリア駐在員などから、あらためて情報を収集しました。
事実確認の結果、グリーンピース・ジャパンのホームページにおける記載には、誤解を招く表現が多々あり事実が正しく伝わらず、当社の社会的信用を不当に貶める結果となっていると認識しています。
現時点で当社は、環境憲章に掲げる「持続可能な森林経営」が、タスマニアでは適正に行なわれていると判断しています。従いまして、当社は、今後もタスマニアからチップを引き続き購入いたします。
 
この根拠として、タスマニア州における森林経営を、当社は次のように認識しています。
(1) 1997年に州政府とオーストラリア連邦政府とで締結された地域森林協定(RFA)に基づき、伐採事業は行われています。この協定は、環境保護と自然利用の調和を目指し、連邦政府、州政府、現地関係者(林業と観光業を含む産業界、科学者、環境団体)とが科学的な根拠に基づいて2年間にわたり協議し、民主的な手続きを経て法制度化されたものです。
(2) この協定は、環境保全と経済的発展とが調和したものとして、現在でも、連邦政府、州政府および大多数のタスマニア住民から支持されています。
(3) この協定では、全森林の40%、州有地に存在する保護価値の高いオールドグロス(老齢樹)林の86%が保護されており、伐採の対象から外されています。保護地区外であっても、高さが85m以上の巨木は周囲の立木を含めて伐採出来ません。
(4) この協定に基づき、生態科学者の専門的なアドバイスを受けて、生物の多様性を維持し生態系を保護する広範なシステムが開発され、運営されています。
(5) オールドグロス林は、現地での製材用に伐採されています。製材に利用できない低質材は、以前は林地で焼却されていましたが、現在は製紙原料用のチップに加工され、資源として有効活用されています。当社が購入しているチップへのオールドグロスの混入率は数%です。
(6) Gunns社は、州有林材(うち約半分は州の委託を受けて伐採している)や自社林材などを使用し、製材およびチップの製造販売を行なっています。Gunns社自ら、持続可能な森林経営に積極的に取り組んでおり、自社の社有林について国際的な認証機関であるISOの認証ISO14001を取得し、さらに2003年11月には森林認証Australian Forestry Standard(AFS)も取得しました。
(7) 州有林についても、すでにISO14001を取得しており、さらにAFSの森林認証の取得が進められています。
※ AFSは世界最大の森林認証機関であるPEFCの傘下にあり、現在相互承認の取得手続きが進んでいます。
 
 
当社は、タスマニアにおいてオーストラリア連邦政府、タスマニア州政府、現地関係者(林業と観光業を含む産業界、科学者、環境団体)の合意により、持続可能な森林経営が今後も行なわれることを強く望むものです。
タスマニアの地域森林協定(RFA)が定める保護区域について、グリーンピース・ジャパン、およびオーストラリアのウィルダーネス・ソサエティから提起されたように、議論があることは当社も承知しており、この問題の解決に向け、関係者が話し合いの場につくよう、タスマニア州政府、グリーンピース・ジャパン、ウィルダーネス・ソサエティ、およびGunns社に、当社は要望いたします。
現地タスマニアで、民主的な手続きを経てこの地域森林協定が見直されるのであれば、たとえ当社に不利益を生じるものであるとしても、当社は進んでその結果を受け入れる用意があります。

 

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以上