2005年3月3日

独自の育種技術で桜の名木の苗木づくりを支援

日本製紙グループ

日本製紙グループは、グループの持つ技術や専門性を社会に役立てるため、これまで独自に開発してきた樹木の育種技術を応用して、歴史的・学術的に価値があり公共性が高い桜の苗木づくりを支援していくことにしました。すでに、鹽竈神社(しおがま じんじゃ、宮城県塩釜市)、葛木坐火雷神社(かつらきにいますほのいかづち じんじゃ/通称 笛吹神社、奈良県葛城市)の2つの神社から由緒ある桜を託され、苗木づくりに成功しています。

日本製紙(社長 三好孝彦)は、これまで、海外で展開している植林事業に活用するため、ユーカリの精英樹の苗木を組織培養で大量生産する技術を開発してきました。今回の桜の苗木づくりは、そのコア技術のひとつである「光独立栄養培養技術※」を応用して挿し木で育成するものです。

桜は日本の国花として広く親しまれていますが、ソメイヨシノなど、樹齢60年を超えるものも多く、最近では樹勢の衰えが指摘されています。これまで、桜の苗木は、挿し木による育成は困難であり、また、接ぎ木では時間がかかる上に台木との活着不良も多いなど、名木の後継木の育成は困難でした。しかし、今回、日本製紙独自の育種技術を用いることにより、難しいと言われていた桜の苗木を効率的に生産できるようになりました。

これからも日本製紙グループは、桜の名木を所有されている団体や個人からの要望に応えて、日本を象徴する花である桜の名木保存に協力していきます。

※光独立栄養培養技術:組織培養でエネルギー源となる糖の替わりに高濃度の二酸化炭素と水と光を施用することで植物自身が持つ光合成能力を引き出す培養方法


1.鹽竈神社(しおがま じんじゃ、宮城県塩釜市)
【鹽竈桜-シオガマザクラ サトザクラ系ヤエザクラ】
これまで接ぎ木で生産されてきたため、接合部に腐れを生じて30年程度で枯れてしまうことが多かったが、今回の挿し木による苗木づくりにより問題を解決できる見込み。

鹽竈神社に咲く天然記念物の鹽竈桜 
挿し木により発根した苗木
挿し木により発根した苗木
鹽竈神社に咲く天然記念物の鹽竈桜  


2.葛木坐火雷神社(かつらきにいますほのいかづち じんじゃ/通称 笛吹神社、奈良県葛城市)
 【波々迦木-ははかぎ 和名 ウワミズザクラ】
同神社に1本のみ受け継がれてきた桜で、天皇家に献上する穀物を作る田畑を決めるときに用いたとされる(※)。樹齢70年を超える老木のため、枝の枯れが目立ち後継の苗木づくりが急務であったが、今回、後継木の生産に成功した。

代々継承されてきた波々迦木 しかし、老木のため昨春の開花はひと枝のみ 挿し木により発根した苗木
代々継承されてきた波々迦木
しかし、老木のため昨春の開花はひと枝のみ
 挿し木により発根した苗木

古事によると、「天皇陛下が後即位せられた時に一代一度の大祭祀である大嘗祭だいじょうさい(新嘗祭にいなめさい)に、お供えに成る新穀を献上する斎田(田圃)を決める国郡ト定こくぐんぼくじょう(府県を決める)真男鹿の肩甲骨を波々迦木で焼きその面に生じた、割れ目で悠紀ゆきの国(東方の県)主基すきの国(西方の県)を決められる。太占ふとまにのうら事に用いられる為に献上された。」 (葛木坐火雷神社)

 
以上