2007年6月21日

マツの挿し木大量増殖技術を共同開発
~松枯れ病被害地の復旧、樹木によるCO2の固定化促進に貢献~

財団法人地球環境産業技術研究機構
日本製紙株式会社

財団法人地球環境産業技術研究機構(理事長:秋山喜久、以下RITE)と日本製紙株式会社(社長:中村雅知)は、光独立栄養培養技術を応用し、有用樹木における挿し木増殖技術に関する共同研究を進めています。このたび両者は、マツ科樹木の挿し木による大量増殖技術を開発することに成功しました。

マツ科樹木は、乾燥・塩害・寒さに強く、痩せた土地でも育つことが知られ、建築材用・製紙用の原材料として世界中で植えられています。また、環境保全や景観の確保などの面からも各地で活用されており、海岸沿いの松林は日本を代表する風景として親しまれています。
このように身近で利用されているマツですが、挿し穂を得にくい、発根に何ヶ月もかかる上に発根率も低い、という理由で、従来の挿し木では増殖が難しく、これまでは種子繁殖や接ぎ木増殖が行われてきました。しかし、種子繁殖は母樹の優れた性質が伝わらない場合が多く、接ぎ木増殖は高い技術が必要で大量生産に向かないという欠点があり、有効な挿し木増殖法の開発が待たれていました。
RITEと日本製紙は共同でこの課題に取り組んだ結果、従来に比べ、挿し穂が20倍以上得られ、発根期間を1/3~1/5に短縮するとともに、発根率を大幅に向上させることに成功しました。まず植物生長調整物質の一種であるサイトカイニンの作用によって挿し穂の数自体を増やし、その挿し穂に光独立栄養培養技術を導入することで、短期間での大量増殖を実現させました。(別紙参照

RITEと日本製紙は、今後この技術をもとに、天橋立(京都府宮津市)にあるマツ命名木など文化的価値の高い銘木の後継樹育成や、松枯れ病被害地の復旧をはかりたいと考えています。また、将来的には乾燥地や痩地などの荒廃地に生長の早いマツを植林し、樹木によるCO2の固定化促進を目指します。
さらに、産業面・文化面・環境保全面などで優れた特徴を持ちながら増殖が困難なさまざまな樹木について本技術の適用・拡大をはかり、有用品種の普及を促していきます。

 
以上