1995年12月12日

植林用クローン苗の大量生産方法の開発に成功

日本製紙株式会社

香川大学農学部(田中道男教授、園芸種苗学)と日本製紙(株)は、新しく改良したカルチャーパック・ロックウールシステムにより、植林用高品質クローン苗の大量生産法の開発に世界で初めて成功した。
 
1.植林用高品質クローン苗の低コスト生産法の開発
パルプ材として非常に利用価値の高いレモンユーカリ(Eucalyputs citriodora)やユーカリグロブラス(Eucalyputs globulus)などの繁殖は種子に頼らざるを得ないので個体差が非常に大きい。このため、早く生長し容積重が大きい優良な個体(精英樹)をフィールドから選抜し、これを栄養繁殖する技術の開発が早くから望まれてきた。この度、これらの組織培養による大量増殖に成功した。従来法であるガラス製や樹脂製の培養容器にしょ糖を含む寒天培地などを用いた場合、クローン苗の発根不良や落葉が実用化への深刻な問題点であったがカルチャーパック・ロックウールシステムでは、無糖の液体培地を注入したロックウールに 増殖シュートを植え付け、このシステムを炭酸ガス施用条件に置いて培養することにより、発根と生長が著しく改善され、充実した大きなクローン苗が短期間で生産することができる。本法の特徴は生産される苗の健全さだけでなく苗生産が簡単で作業効率が極めて良いことがあげられる。これまで組織培養による苗生産の問題であったコスト高や作業の煩雑さを一挙に解決した画期的な方法であり、他の有用樹木への応用も可能である。
 
2.これからの取り組み
日本製紙(株)では、本システムによって育成されるクローン苗を用いて、その地域にあった樹種の植林を考えている。レモンユーカリの生育に適している地域は東南アジアであることから、国立シンガポール大学理学部植物学科長のゴー教授(Prof. C.J.Goh)に本システムで得られたクローン苗の順化と試験栽培を依頼したところ、本システムは均一苗の大量生産(100万本単位)が可能であり、熱帯地域における森林再生へも応用が期待できるとの評価が得られ、今回、試験に全面的な協力が得られることになった。先日、田中教授と日本製紙は国立シンガポール大学を訪問し、本件に関する詳細な打ち合わせをゴー教授と行うとともに、国立シンガポール大学でレモンユーカリクローン苗の順化等、植栽の予備試験を実施した。
 
3.カルチャーパックロックウールシステムとは
カルチャーパック・ロックウールシステムは田中教授とダイキン工業(株)によって1988年に共同開発された。高いガス透過性や耐熱性などの優れた特性を持つフッ素樹脂フィルムで作製された容器内に液体栄養培地を添加したロックウールを入れ、これに組織培養技術で増殖されたシュート(苗条)を植え付け、クローン苗に生育させる。これまでに、このシステムを用いて多くの園芸植物で苗の充実度や成長性と作業工程の簡略化、低コスト化などのその優れた実用性が証明されてきた。今回の研究には最近開発された本システムの実用化モデル(ミラクルパック・(有)バイオU製)がはじめて使用された。

 
以上