1998年12月25日

パルプ化しやすい樹木開発に有用な、新規遺伝子の分離に成功

日本製紙株式会社

日本製紙は、パルプ化しやすい樹木の育種に活用するために有用な、新規遺伝子の分離に成功した。
 
今後世界的に紙・パルプ用の木材資源が逼迫する中で、わが国の製紙会社が安定して木材資源を確保するには、海外における計画的な植林事業が欠かせなくなる。このため、パルプ化しやすく、しかも植林地で成長の早い樹木の開発は、重要な研究課題となっている。
 
紙・パルプの原料となる樹木は、おもにセルロース約50%、リグニン20~30%で構成され、紙はこのうちセルロースを抽出して作られる。したがってパルプ化しやすい樹木は、セルロースが多くリグニンが少ないものが望まれ、1990年ころから世界的に遺伝子操作を用いた研究が行われてきた。現在、リグニン合成過程に関わる遺伝子については、欧米の大手化学企業が強力な特許を握っている。
今回、当社が分離に成功したのは「Ntlim1」という名前の遺伝子で、これは他の遺伝子の動きを制御する「転写因子」である。この転写因子は、リグニン合成過程に働く遺伝子全体の働きを制御するスイッチの役割を果たしており、働きを抑えることで、すでに特許が取られている各遺伝子を直接制御しないで、リグニン量を低減することができる。モデル植物のタバコを用いた実験では、リグニン量を30%低減できることを見出している。
 
当社では、1995年に開発した植物への遺伝子導入技術と合わせて、他社の特許に抵触することなく、独自の技術で紙・パルプの原料である樹木に応用していきたいと考えている。 なお、この遺伝子に関する国内特許は出願を完了し、海外特許の出願を予定している。
 
本研究は、平成10年12月16日(水)~19日(土)、パシフィコ横浜にて開催された日本分子生物学会年会で発表した。

 
以上