1999年6月3日

植物遺伝子導入技術に関し、英国・ゼネカ社にライセンス供与

日本製紙株式会社

日本製紙は、独自開発した、植物への遺伝子多重導入技術「MATベクタ-システム」に関し、英国の有力バイオ企業であるゼネカ社との間で、ライセンス契約を締結した。

日本製紙は、本システムを海外企業との技術交換に用いることにより、林木育種に欠かせない有用遺伝子および先行基本技術の取得を目指している。一方、ゼネカ社も本システムの利点を認め、評価研究の結果、実用化に向けて有望と判断し、契約に至ったものである。
本契約では、両社事業のタ-ゲットの違いを踏まえ、次の通りライセンス対象植物種および地域での棲み分けを考慮した。

森林・コメ分野を除く植物 日本以外 ゼネカ社に独占的実施権およびサブライセンス権供与
日本 当社独自の実施およびサブライセンス可能
森林・コメ分野 全世界

このほか、日本製紙は契約一時金のほかにゼネカ社のサブライセンス実績に応じた分配金を得ることができるとともに、ゼネカ社保有の基本技術を、日本製紙がタ-ゲットとしている森林分野(林木育種)で無償で使用する権利を得た。

今回の契約では、ほかに以下の効果を期待している。

(1)ゼネカ社を通じたMATベクターシステムの普及。
本システムは、広く植物種の育種に利用可能であり、当社はMATベクタ-研究会を主催し、国内外の大学・研究所・企業への普及を図っている。しかし、より積極的な普及には、ゼネカ社のような有力バイオ企業にライセンスすることが早道と判断した。
(2)MATベクターシステム応用研究の効率化。
本システムは、非常に応用範囲が広い基本技術であるが、植物種によっては実用化に際して、システムの応用研究が必要なケ-スもある。これらの研究を当社のみで進めるよりは、ゼネカ社と協同する方が、時間的、コスト的にもメリットが大きい。なお、得られた互いの応用技術は、相互利用できる。
(3)ライセンス料の取得
バイオ研究、特に植物育種の研究では、研究費の回収に長期間を要する。そこで、早期の回収と再投入が重要と判断し、ライセンス契約の道を選択した。

今回のケースは、遺伝子操作による植物育種の分野で日本企業が生き残っていく上での、ひとつの道筋を与えたものと考えている。

* MAT(Multi-Auto-Transformation)ベクタ-システム

遺伝子操作による植物育種分野では、多くの基本特許が海外企業により取得されている。当社では、自社基本技術の開発を重点目標とし、1995年に遺伝子を植物に導入する技術「MATベクタ-システム」を独自開発した。この方法は、従来法に比べ次のような特徴をもち、この分野でのキーテクノロジーになる可能性が高い。

1. 同一植物に対し、繰り返し遺伝子組み換えを行うことができる。
2. 組み換えた植物に、標識遺伝子(遺伝子の導入が行われたことを確認するために、一緒に導入する遺伝子)が残留しないため、安全性が高い。
3. 組み換え効率の向上が期待できるとともに、組み換えた植物を視覚的に選抜することもできる。

本システムは、世界各国に特許出願し、すでに米国をはじめ数カ国で特許権を取得している。

 
以上