セレンピア®が広げた化粧品処方の可能性 ― 味の素ヘルシーサプライが見いだした新たな価値
味の素ヘルシーサプライ株式会社 香粧事業本部 東京カスタマー開発センター
髙橋 國次氏
化粧品開発では、原料そのものの性能だけでなく、ほかの原料とどのように組み合わせるかが製品価値を左右する。味の素ヘルシーサプライ株式会社では、化粧品処方の可能性を広げる新たな素材として、日本製紙のセルロースナノファイバー「セレンピア®」に着目。カチオン性化粧品原料「CAE®(ココイルアルギニンエチルPCA)」との組み合わせによって、新たな機能価値を見いだした。採用に至った経緯や、得られた成果、今後の展望について、髙橋氏に話を聞いた。
セレンピア®との出会いが生んだ新たな価値
味の素ヘルシーサプライ株式会社の事業内容と、髙橋さんの主な業務内容について教えてください。
髙橋:当社は、BtoB向けに味の素グループの製品を取り扱う販売会社です。アミノ酸を軸として、人にも環境にも優しいユニークな原料を開発し、その原料を食品、化粧品、医薬品だけでなく、農業資材や飼料など幅広い分野に展開しています。また、食品や化粧品のODM事業も手掛けています。
私は化粧品分野で、ODMや原料販売に関わる処方開発や効果検証などを担当しています。今回、セレンピア®を評価することになったのも、化粧品処方への新たな活用方法を模索していたことがきっかけでした。
セレンピア®を検討される前には、どのような課題があったのでしょうか。
髙橋:当社では、カチオン性原料であるCAE®を活用した化粧品開発を進めていました。CAE®は、使用感や機能面では非常に魅力的な原料ですが、組み合わせる原料によっては処方設計上の工夫が必要となる場合があります。
CAE®の良さを生かしたまま使用できる原料を探す中で、セレンピア®に着目し、評価を始めました。
凝集しにくさと高い汎用性が採用の決め手に
評価する中で、どのような点を重視されましたか。また、採用の決め手は何だったのでしょうか。
髙橋:一番重視したのは、凝集しないことです。それに加えて、みずみずしい使用感が得られることや、塗布後に肌の上で機能を発揮することも重要でした。実際に評価したところ、セレンピア®はCAE®と併用した際、十分な粘度が得られました。カチオン系製剤にも使用しやすく、汎用性が高かったことも大きなポイントです。さらに、CAE®との組み合わせによる相乗効果が確認できたことが採用の決め手となりました。
CAE®との組み合わせで生まれた新たな価値
実際にはどのような効果が得られましたか。
髙橋:CAE®とセレンピア®を組み合わせた開発品を肌に塗布すると、乾燥後に均一な塗膜が形成され、その塗膜は疎水性を示すことが分かりました。この塗膜により、水分蒸散抑制および角層水分量向上が示唆されました。また、みずみずしい使用感も得られ、CAE®単独では実現できなかった新たな価値を生み出すことができました。
日本製紙から提供されたセレンピア®に関する豊富な基礎データは、新たな処方やアイデアを検討するうえで大きな助けになりました。
処方開発から提案まで価値を広げるセレンピア®
セレンピア®の魅力はどのような点にあると感じていますか。
髙橋:まず、ほかのアニオン系高分子と比較して安定配合しやすいことです。次に、想像以上に粘度が得られること。そして、カチオン系製剤にも使用できるなど、汎用性が高いことです。
また、セルロースという自然由来の原料である点も評価しています。ブランドの世界観づくりにも活用しやすく、「そこまでこだわっているのか」という印象を消費者に与えることができます。処方開発者が企画担当者へ提案する際にも、その価値を説明しやすく、製品化に向けた検討を進めやすい点もメリットだと感じています。
「消費者ベネフィット」が提案力を高めた
採用後のお客様や市場の反応はいかがでしたか。
髙橋:良好な反応を得ることができました。化粧品メーカーへ提案する際には、「消費者にとってどのようなベネフィットがあるのか」を説明できることが重要です。今回は、均一な塗膜形成による水分蒸散抑制と保湿機能というストーリーを構築できたことで、消費者にその価値を伝えやすくなりました。データに基づいて提案できたことも高く評価され、製品化に向けた検討も順調に進みました。提案先の化粧品メーカーから技術面を高く評価していただき、大きな手応えを感じました。
学会で得た手応えと新たな学び
今回の研究成果は学会でも発表されたそうですが、どのような反響がありましたか。
髙橋:CAE®とセレンピア®の組み合わせに関する研究成果を学会で発表したところ、多くの方に興味を持っていただきました。ポスター発表では、アニオンとカチオンによる複合体形成や機能発現について、予想以上に多くの質問やディスカッションが寄せられ、この技術への関心の高さを実感しました。また、研究者との議論では、処方設計や分散工程、膨潤工程などについて非常に専門的な質問もいただき、私自身も多くの学びがありました。
さらなる機能性と新たな処方開発へ
今後の展望について教えてください。
髙橋:今回の研究を通じて、CAE®とセレンピア®の組み合わせが新たな機能を生み出すことを確認できました。今後は、より機能性の高い化粧品開発に活用するとともに、原料として化粧品メーカーへの提案も積極的に進めていきたいと考えています。また、セレンピア®にはピッカリングエマルション形成への応用可能性もあります。そのため界面活性剤低減型の乳化技術への応用可能性が期待されます。CAE®との組み合わせによる新たな処方開発にも取り組みながら、さらなる可能性を追求していきたいと考えています。
関連情報
味の素ヘルシーサプライについて
AHS 味の素ヘルシーサプライ株式会社(公式サイト)
https://www.ahs.ajinomoto.com/
化粧品原料・CAE®などの技術情報(研究・開発者向け)
AMISOFT.JP
https://ahs-amisoft.jp/mypage/login
聞き手:日本製紙 バイオマスマテリアル・コミュニケーションセンター
取材日:2026年6月24日
写真:日本製紙
※所属・役職は取材当時(2026年6月24日)のものです。
