セルロールナノファイバー「セレンピア®」

セレンピア®プラスを使うのが当たり前、を目指して

富士革新素材研究所 CNF研究室Ⅲ
井上亮太

富士革新素材研究所は紙のまち富士市で、再生可能な「木」から得られる木材繊維(パルプ)を原料とする新製品・新素材を革新的に研究開発しています。CNFを補強材として使用した樹脂材「セレンピア®プラス」の研究開発拠点です。

富士革新素材研究所(静岡県)

セレンピア®プラスを使うのが当たり前、を目指して

日本製紙はCNFを補強材として使用した樹脂材「セレンピア®プラス」を研究開発している。

セルロースを樹脂の補強材として活用

セレンピア®プラスは、CNF(セルロースナノファイバー)を強化材として使用した樹脂材料です。日本製紙独自のパルプを原料に、樹脂と混練することで、コストを抑えつつ高性能なCNF強化樹脂を実現しています。セルロースを補強材として使うことで、従来の強化樹脂材料に比べて強度と軽さを両立できるのが特徴です。

また、セレンピア®プラスは他の樹脂素材と比べて、サステナブルな素材であること、リサイクル性が高いことが大きな特長です。補強材でよく使われるガラスファイバーは繰り返し使用が難しいですが、セレンピア®プラスは繰り返し使用が可能です。また、生分解性樹脂と組み合わせることで、オールバイオマスの製品も実現できます。性能と環境配慮の両立が可能な点も魅力です。

現在は、射出成形用の原料として、ヤマハ発動機様の水上オートバイのエンジンカバーなど、モビリティ分野での採用が進んでいます。今後は2輪・4輪車など、さらに幅広い分野への展開が期待されています。特定の部材に限定せず、ユーザー様のご要望に合わせて最適なスペックを提案できるのも強みです。

日本製紙の最大の強みは、パルプを大量に安定供給できる点です。大規模なモビリティ事業にも十分対応できる供給体制を整えています。また、CNF強化樹脂の量産に向けて、早い段階から実証機を導入し、着実に取り組みを進めてきました。

3Dプリンターへの展開で「使われ方」や「現場の声」をダイレクトに反映

3Dプリンター向けにもセレンピア®プラスを展開しています。産業用途で注目されている粉末床溶融結合方式3Dプリンター用に、粉末状に加工した原料を開発しています。この方式では、薄く広げた原料粉末をCO2レーザーで溶かして積層することで、実部材としての強度も確保しつつ、セレンピア®プラスが持つ軽量化のメリットも発現できます。

3Dプリンターは、もともとプロトタイプや少量多品種生産に適しています。特に、金型がない古い車種の補給部品や、オーダーメイドのヘルメット・義足など、カスタマイズ性が求められる分野で活用が進んでいます。

3Dプリンター分野では、ユーザーと直接やり取りしながら、実際に作ったものをすぐに確認できるのが大きな魅力です。原料開発だけでは見えにくい「使われ方」や「現場の声」をダイレクトに反映できるため、やりがいを感じています。

現状、CNF強化樹脂材料の普及はまだこれからですが、今後は新しい製品において「CNF強化樹脂を使うのが当たり前」という状況を目指しています。製品開発の現場で、セレンピア®プラスがスタンダードになるよう、今後も取り組みを続けていきます。

インタビューを受ける井上さん
3Dプリンターで作成した、セレンピア®プラスを使用したプロトタイプ

取材日:2025年5月27日
企画:バイオマスマテリアル・コミュニケーションセンター
写真:日本製紙株式会社