銅イオン担持セルロース「Cu-TOP®」
銅イオンの力で社会を豊かに:石巻工場発「Cu-TOP®」の挑戦
CNF開発推進室(宮城県)
2017年4月よりCNF量産プラントの操業を開始した石巻工場では、セルロースナノファイバー(CNF)を基盤とした革新的な新素材「Cu-TOP®」を製造しています。
石巻工場(宮城県)
まずは簡単な自己紹介をお願いします。
遠藤:CNF開発推進室の遠藤です。工場で製造しているCu-TOP®を含むCNF製品の管理全般を担当しています。
三浦:CNF開発推進室の三浦です。製品の製造管理全般として、生産計画や原材料の発注、修繕工事計画などを担当しています。
木村:CNF開発推進室の木村です。製品の製造オペレーターを担当しています。
加賀谷:CNF開発推進室の加賀谷です。完成した製品の品質分析を担当しています。
田村:富士革新素材研究所の田村です。駐在員として石巻に常駐し、開発、品質管理、処方設計を担当しています。
銅イオンがもたらす多機能性
「Cu-TOP®」とは具体的にどのような製品なのでしょうか?
田村:「Cu-TOP®」は、TEMPO触媒によって酸化反応させたパルプ表面のマイナス電荷に、プラス電荷を持つ銅イオンを担持(結合)させた製品です。銅イオンが持つ「消臭」「抗菌」「抗ウイルス」といった機能をパルプに付与することで、多様な用途展開が可能です。
遠藤:Cu-TOP®の「Cu」は銅の元素記号、「TOP」はTEMPO酸化パルプ(TEMPO-Oxidized-Pulp)の頭文字を取って名付けられました。
田村:形状がパルプであるため、さまざまな形に加工することができます。
パンデミックがもたらした用途開発
用途開発の経緯を教えてください。
遠藤:Cu-TOP®の機能を活かした用途を検討していたなかで、節目となったのが2019年末からのコロナ禍です。研究所でコロナウイルスを不活性化するエビデンスを新たに拡充し、Cu-TOP®を配合した「抗ウイルス紙」や「不織布」「和紙糸(Cu-TOP®アオ)」を開発しました。
苦労が財産となった抗ウイルス機能の確立
「抗ウイルス紙」の製造において、特にどのような苦労がありましたか?また、それをどのように乗り越えられましたか?
三浦:「抗ウイルス紙」の製造では、工場の抄造課や技術室など、場内の各部署に協力いただきました。CNFプラントから抄造への移送ラインがなかったため、コンテナに詰めたCu-TOP®を我々が抄造の原料タンクに手投入するのに苦労しました。
木村: 2~3時間の抄造テストのため、朝から夕方まで投入作業を数日かけて行いました。新製品を開発するというモチベーションが高かったため、あまり疲れを感じることなく対応したと記憶しています。
田村:抗ウイルス機能がすんなり発現したわけではなく、試作を繰り返しながら処方と品質が定まっていきました。この時に得られた知見は、その後のCu-TOP®関連製品の開発において貴重な財産となりました。
Cu-TOP®が拓く新たな可能性
加賀谷:抗ウイルス紙の開発をきっかけに、銅イオンの持つ機能性と可能性を実感しました。自分たちが作っているCu-TOP®が、このあと和紙糸「Cu-TOP®アオ」となって「靴下」や「タオル」になるとは、想像もしていませんでした。
遠藤:大手靴下メーカーである助野株式会社とのコラボレーションにより開発された「安全靴専用靴下」は、Cu-TOP®の「消臭」機能を活かす製品として、石巻工場の従業員がモニターとなり試着評価を重ねました。丈の長さや肌触りなど、モニターの意見を反映し、試作を重ねて製品化に至りました。
加賀谷:私は多汗症のため、業務中に何度か靴下を取り替えることがありますが、和紙糸の通気性と消臭性には驚きました。新商品の開発という貴重な体験にやりがいを感じましたし、形になった時は大変嬉しかったです。
田村:助野様のほかの商品と比較しても、Cu-TOP®の消臭効果は高く評価され、この取り組みは新聞やテレビでも取り上げられました。
遠藤:BtoBでの販売が主ですが、石巻工場の従業員の多くが着用を希望するほど関心を示しています(石巻工場では先行して2026年4月1日より安全靴専用靴下が福利厚生の一環として配布されました)。
チームの努力が支えるCu-TOP®の信頼性
品質維持において、チームとしてどのような努力をされていますか?
遠藤:製造プラントの役目として、目標の品質収率を100%に設定しています。実績として、毎年100%をキープしています。私の記憶では、立ち上げからほとんど品質ロスを出していません。製造担当各々が緊張感を維持しながら操業管理してくださっていることに感謝しています。
加賀谷:ユーザーの増加に伴い分析機器や測定項目が年々増え、日々勉強です!忙しいですが、その分やりがいも感じています。
田村:石巻工場は、CNF関連製品(Cu-TOP®を含む)として2019年にISO 9001(品質マネジメントの国際規格)の認証を取得しました。徹底した品質管理体制の下、顧客からの信頼に応えていきたいと考えています。
銅イオンの無限の可能性と被災地工場の使命
Cu-TOP®の新たな用途として、現在どのようなアイデアや検証が進められていますか?
三浦:銅イオンには、特定の虫の成長を阻害する効果が確認されています。製紙工場では、季節で大量発生する虫が製造工程に入り込み、品質エラーとなる悩みを抱えていることからCu-TOP®を活用した虫の発生抑制効果をCNFプラントで検証しています。固定観念を取り払い、社会のニーズに応えられるような用途を探していきたいと考えています。
田村:銅の持つ可能性を、工場というフィールドを活用して検証し、研究や営業にフィードバックすることで、用途開発に繋げていきたいと考えています。
遠藤:東日本大震災の被災地である石巻工場にCu-TOP®の製造プラントがあることに運命的なものを感じます。あの時、被災地に必要なものは何だったのか。そこにCu-TOP®を用いた製品で貢献できるのではないかと考えています。被災地工場の使命として、有事の際に求められる製品を提供できるよう、研究・営業・工場が三位一体となって進めていきたいと考えています。
隣接する石巻工場(奥)
少数精鋭チームが挑むCu-TOP®の無限の可能性
石巻工場は、Cu-TOP®の製造を通じて、銅イオンの持つ「尖った機能」を最大限に活かし、社会課題の解決に貢献することを目指しています。少数精鋭のチームが、被災地工場としての使命感を胸に、内輪だけでなく、異業種からの意見も取り入れながら、新たな用途開拓と未来の創造に挑戦し続けています。
インタビュー参加者
CNF開発推進室 遠藤 真司
CNF開発推進室 三浦 繁之
CNF開発推進室 木村 巧
CNF開発推進室 加賀谷 泰幸
富士革新素材研究所 石巻駐在 田村 直之
取材日:2026年2月16日
企画:バイオマスマテリアル・コミュニケーションセンター
写真:日本製紙株式会社
