素材の機能性を防災用品へ。
Cu-TOP®アオで実現した備蓄用タオルケット
日本製紙クレシア株式会社
マーケティング総合企画本部 マーケティング部 課長 吉田ゆかり氏
開発本部 商品開発部 主任 林生弥氏
避難所で配布される備蓄毛布には、長年見過ごされてきた課題がある――。
そう語るのは、日本製紙クレシア株式会社の吉田氏と林氏だ。備蓄毛布の臭い対策や衛生面への配慮に加え、災害時のさまざまな場面で活用できる防災備蓄品として「ストックウェル 防災備蓄用ハーフケット コンパクト(以下、「ストックウェルハーフケット」)」は開発された。
構想から約2年。開発の背景や苦労、そして製品に込めた思いについて話を聞いた。
お二人の担当業務について教えてください。
吉田:私はマーケティング部門に所属しています。ティシューをはじめ、ボックストイレなどの防災用品、水や消毒液、ボールペンやクレヨンといったノベルティまで、幅広い商材を取り扱っています。新しい商品や魅力のある商材があれば提案し、市場へ展開していく仕事です。自由度が高い部署なので、新しいことに挑戦できる環境だと思います。
林:私は商品開発を担当しています。企画が立ち上がった後、仕様設計や性能評価を行い、量産化まで進めるのが役割です。「ストックウェルハーフケット」の素材選定や加工方法の検討、品質評価などを担当しました。
Cu-TOP®アオが生んだ新たな防災用品
なぜ備蓄用タオルケットなのですか。
吉田:最初は機能性パルプ「Cu-TOP®」を配合した和紙糸「Cu-TOP®アオ」を使用したハンドタオルを紹介されたことがきっかけでした。Cu-TOP®アオは消臭機能と抗菌機能を備えており非常に魅力的でしたが、既存のタオル市場には類似商品も多く、新しい価値を出すのが難しいと感じていました。そこで、この機能をもっと活かせる商品はないかと考え始めたのです。
以前、水害を経験された方から「避難所で配られる物資に不快な臭いがあると、精神的につらい」と伺いました。「臭い」は生活の質に関わる問題です。消臭・抗菌機能には意味があると考え、「開封した瞬間から安心して使える備蓄用タオルケット」を目指して商品化を進めました。
林:衛生面という観点でも重要です。避難生活では十分な清掃や洗濯が難しく衛生環境が悪化しやすいため、菌の増殖を抑える抗菌機能が役立つ場面もあると思います。
毛布の“代わり”ではなく、別の価値を
毛布の代替を目指した商品なのでしょうか。
吉田:毛布の代替というより、タオルケットだからこそ生まれる新しい価値を提供したいと考えました。この商品はタオル地なので、さまざまな使い方ができるところが特徴です。まずはタオルケットとして身体を包むことができますし、避難所では段ボールベッドの上に敷いてシーツ代わりに使うこともできます。冬場には、毛布と身体の間に入れてインナーケットとして使うこともできますし、タオル地ならではの吸水性を生かして身体を拭くこともできます。さらに、洗って繰り返し使えるのも特長です。私たちが想定していなかった使い方が生まれることも期待しています。
林:いろいろな使い方と収納性のバランスを考えながらタオルケットのサイズを検討しました。大きすぎると保管効率が悪くなりますし、小さすぎると使い勝手が悪くなります。最終的には140cm×90cmというサイズになりました。
吉田:実際に使ってみても、避難所では一人ひとりのスペースも限られていますので、タオルケットとして十分なサイズ感です。
小さく収納しても、使い心地はそのまま
防災用品ならではの課題はありましたか。
林:自治体や企業の備蓄では保管スペースに限りがありますので、備蓄品をコンパクトに収納できることは非常に重要です。ただ、単に小さく圧縮できれば良いというわけではありません。圧縮しすぎると生地に負荷がかかりますし、開封後の状態にも影響します。試作段階では、圧縮後にシワが強く出たり、生地の風合いが損なわれたりすることがありました。そのため圧縮包装の加工会社と相談しながら、折り方や圧縮方法、パッケージサイズなどを細かく見直していき、最適化を図りました。
吉田:備蓄品として考えると、収納効率と品質の両立が大切なのです。小さく保管できても、いざ使うときに品質が損なわれていては意味がありません。そのバランスを取ることが、難しかったですね。
10年後も安心して使うために
備蓄品は保証期間が求められます。
林:「ストックウェルハーフケット」は10年間の品質保証です。開発で一番苦労したのは、その保証期間に根拠を持たせることでした。タオルの長期保存商品を扱うのは初めてだったため、長期保存を想定した加速試験を実施し、製品の品質やCu-TOP®アオの消臭・抗菌機能が長期間維持されることを確認しました。また、湿気や酸素の影響をできるだけ抑えられるよう、包装仕様に加え、除湿剤や脱酸素剤についても検討を重ねました。
吉田:防災用品は、購入したときに性能が良いだけでは不十分だと思っています。実際に使うのは何年も先かもしれません。だからこそ、10年後に開封したときも安心して使えることが大切だと考えています。
企業にも広がる防災備蓄
現在は、どのような市場への提案を進めているのでしょうか。
吉田:自治体向けはもちろんですが、企業の防災備蓄にも大きな可能性があると考えています。最近は災害発生時に従業員をすぐ帰宅させるのではなく、一定期間社内に留まることを前提とした対策を進める企業も増えています。特に首都圏では帰宅困難者対策の重要性が高まっており、企業が備蓄品を見直す動きも見られます。実際に、企業の方からは、「毛布以外の選択肢として面白い」という評価をいただくこともあります。収納性や多用途性に魅力を感じていただいているようです。
使い方を決めるのは、使う人
完成した製品に込めた思いを教えてください。
吉田:「ストックウェルハーフケット」はさまざまな使い方ができますが、私たちは単にタオルケットを作りたかったわけではありません。避難生活の中で、少しでも役立つものを作りたいという思いがありました。そのために消臭機能や抗菌機能を取り入れ、長期備蓄にも対応できるようにしました。
私たちが想定している使い方だけが正解ではないと思っています。大切なのは「用途を限定しないこと」です。実際の災害現場では、その時々で求められるものは変わります。だからこそ、利用される方自身が価値を見つけてくださる余地を残したいと思いました。私たちが想定していなかった使い方が生まれれば、それはこの商品の可能性が広がったということだと思います。
日常と防災をつなぐ、次の一歩
今後の商品展開についてお聞かせください
吉田:実は、開発当初から考えていたテーマの一つがペット防災なのです。最近はペットも家族の一員として避難する時代になっています。ただ、ペット向けの防災用品はまだ十分とは言えません。今後は消臭機能や抗菌機能を生かした犬や猫向けの防災用品を検討していきたいと考えています。
林:Cu-TOP®アオの消臭機能はペット用品に向いていると思います。ペットにとって普段から使っているものを、そのまま災害時にも使えることは重要だと思います。日常生活と防災を切り離すのではなく、普段使いの延長線上に防災がある。そうした考え方に基づいて商品づくりができればと考えています。
(日本製紙 バイオマスマテリアル販売推進部 太田壮哉、
日本製紙クレシア 商品開発部 神尾さくら)
商品詳細
日本製紙クレシア株式会社
ストックウェル 防災備蓄用ハーフケット コンパクト
https://nv.crecia.co.jp/products/disaster/StockWell_halfKet.html
聞き手:日本製紙 バイオマスマテリアル・コミュニケーションセンター
取材日:2026年6月16日
写真:日本製紙
