丹那地区140年の酪農歴史 千代に八千代につないで

片野牧場 片野恵介氏(静岡県)
酪農王国オラッチェ 酪農王国株式会社代表取締役社長 西村悟氏(静岡県)

静岡県田方郡函南町丹那地区は140年以上にわたる酪農の歴史があり、函南東部農業協同組合が同地区のブランド「丹那牛乳」を生産している。組合員の片野牧場は約120頭の牛を飼育し、2023年10月からは搾乳牛105頭に「元気森森®」を給与している。片野牧場の3代目である片野恵介氏と、同組合が51%出資している観光牧場「酪農王国オラッチェ」を経営する酪農王国株式会社代表取締役社長の西村悟氏のお二人に話を聞いた。

片野牧場
酪農王国オラッチェ

丹那地区で持続可能な酪農を

元気森森®と接点を持ったいきさつについて教えてください。

西村:実は元気森森®の名前自体は以前から知っていました。しかしその成分や効果についてはまだよく分かりませんでしたし、本格販売をしているとも思いませんでした。2023年に静岡県フードテッック支援事業の一環で、元気森森®を使用した実証実験の誘いを受けました。その頃は、牛の飼料が高騰し始め、飼料の自給率などの問題が浮上し、丹那地区で持続可能な酪農をどう続けていくか漠然と考えていたタイミングでした。元気森森®営業担当者から説明を聞いていくうちに、全国各地での実績が明らかになり非常に興味を持つようになりました。国産で安定品質、そして安定供給が可能という点も魅力的でした。良い意味でショックを受けましたね。ぜひ、この丹那地区で元気森森®の実証実験をしたいと考え、組合員の片野牧場の片野さんに声をかけました。

元気森森®との接点を語る西村さん
函南東部農業協同組合

正直良くなかった元気森森®の第一印象

片野さん

西村さんから元気森森®の実証実験の誘いを受けた片野さんの最初の反応はどのような感じでしたか?

片野:酪農王国の西村さんから元気森森®の実証実験を打診され、半透明の小袋に入った元気森森®を最初に見た瞬間、「牛は食べないだろうな」と思いました。20年以上酪農を続けてきて、また、牛が食べる飼料は必ず自分の口でも試すようにしていますので、最初に口にしたときは正直単体での給与は厳しいと感じました。

西村:最初に片野さんに元気森森®のサンプルを持って行った時、本当に元気森森®を食べましたね。

片野:必ず自分の五感を使って判断しています。また価格が高いと感じ、実証実験を始めるかどうか迷いました。しかし営業担当者からは、元気森森®自体は嗜好性がなく、ほかの飼料に混ぜて使用することや、単純置換によるコスト削減ではなく、乳成績・健康状態・糞の状態などの総合評価で採用される例が多いとの説明を受けました。最終的には営業担当者の熱意に押されましたね(笑)

西村:酪農家の皆さんが飼料を変えるということは本当にデリケートなことです。仮に失敗して乳量が減ってしまったら生活に直結してしまいます。飼料を変更することはとても勇気が必要です。ただ今回は日本製紙、静岡県がバックアップ、そして元気森森®の過去の実績、飼料計算など片野さんと確認し話し合いをしました。新しい事にチャレンジする酪農家が少ない中、片野さんは、元気森森®の実証実験を引き受けてくれました。

片野さんが味見した元気森森®のサンプル

3か月で元気森森®の効果を実感

元気森森®の実証実験開始時や実感した効果などを教えてください。

片野:2023年10月からTMRに元気森森®を上乗せにして給与を開始しました。最初は元気森森®現物を1頭につき約100gを給与しました。最初は牛が元気森森®を食べるか非常に不安でしたが私の心配をよそに牛たちは違和感なく口にしていました。予想外でしたよ。慣らし期間は半月位で、徐々に推奨の2kg/頭・日まで増やしました。3か月後にはルーメン内の調子が良くなり、乳房炎も無く疾病は減ったと感じました。乳成績は良好な状態を維持。ちょうど冬の時期だったこともあり、夏場でも乳成績が維持できるか検証が必要だと考えたので、しばらくテストを継続することに決めました。

元気森森®を配合した飼料
やさしく牛を見つめる片野さん

2024年酷暑の夏でも元気森森®で乳量が向上

元気にモリモリ食事中の牛たち

元気森森®の実証実験を継続した2024年夏の効果はいかがでしたか?

片野:2024年の夏は例年以上に非常に暑かったですね。特に8月上旬の丹那地区は雨も降らず、牛にとって過酷な環境でした。その年に限り乳脂肪向上のために使用される脂肪酸Caについては牛の肝臓に負担をかける可能性があるため使用しませんでした。にもかかわらず、元気森森®のテストを継続していたこともあり、酷暑の夏でも乳脂肪を維持。そして乳量が向上しました。

西村:夏に乳量が向上したことは大きかったですね。

片野:夏場の乳脂肪管理は本当に大変です。元気森森®で夏場の乳成績は確実にあがると実感しましたね。乳脂肪の再現性はありますので、試せば優位性が出ると思います。今年の夏も元気森森®で乳成績の向上を期待しています。

丹那地区の酪農のこれから

これからの丹那地区での酪農の未来についてどのように考えていますか?

片野:丹那140年酪農の歴史や重みを常に頭の片隅に置くようにしています。丹那では昔から牛を「お座敷牛」と言い、お座敷で育てるように大切に牛を扱います。エコフィードについては「食品の残り粕をお座敷の牛に与えますか?」という考え方も一部あるのが現状です。そのような中、先祖が残した丹那の牛はどうあるべきかと考えた時、永続的に牛と共に幸せに暮らすためには、今までとは異なるエコフィードへの考え方や元気森森®といった新しい技術の導入が必要不可欠だと考えています。

西村:現在片野牧場では農協を通じて元気森森®を購入しています。地域の酪農専門の農協が購入した元気森森®によって、地域の酪農が成績を上げて経営を持続させる仕組みができました。幸いにも「丹那牛乳」は先人たちが長年培ってきたブランドであり、静岡県の安心安全な牛乳ブランドのひとつとなっています。これからも現状に甘んじることなく、より丹那ブランドを高めていき前進し続けていきます。

丹那牛乳
持続可能な未来へ邁進するお二人

聞き手:日本製紙 バイオマスマテリアル・コミュニケーションセンター
取材日:2025年2月17日
写真:日本製紙