元気森森®と拓く新たな飼料の可能性

有限会社ケイアンドエス牧場サービス 
代表取締役社長 木下博保氏 / 営業 木下太晴氏
(栃木県)

1993年10月に単味原料、未利用原料の成分特性を生かした発酵飼料を製造する有限会社ケイアンドエス牧場サービスが設立された。現在は岩手県久慈市と栃木県那須塩原市の2つの工場と沖縄県那覇市に営業所をもつ。今回は、代表取締役社長の木下博保氏と営業の木下太晴氏のお二人に国産養牛飼料「元気森森®」を使用した飼料製造について話を聞いた。

ケイアンドエス牧場サービス

自ら設計した飼料で牛の種付きが向上、独立のきっかけに

有限会社ケイアンドエス牧場サービスの成り立ちについて教えてください。

木下博:私はもともと畜産関係のサラリーマンで、最初から飼料製造会社に勤めていたわけではありません。最初は栃木県の畜産会社に声をかけられて入社しました。そこで肉牛担当となり、北海道の農場設立にも携わりました。さらにF1事業の一環で母校の獣医に相談しながら酪農家に精液販売も行っていました。ある日、牛の種付きが悪いという問題が生じ、獣医に相談しました。獣医からは「牛の状況が悪いのか分からないから、飼料計算を試してみてはどうか」と提案されました。そこで飼料計算を自ら行った飼料を与えたところ、牛の種付きが改善されました。数年後、農家の方々から飼料分野で「独立しないか」と応援され、独立を決意し現在に至ります。社名は、酪農家及び和牛農家の経営をより健全に安定させたいという願いを込めてケイアンド エス (Keeping and Supporting)と名付けました。

キュートな会社のロゴ

「高エネルギー源」や「pHの安定」で気に入った元気森森®

元気森森®との出会いについて教えてください。

木下太: 元気森森®を初めて知ったのは、バイオ科学株式会社の担当者からの紹介がきっかけでした。牛はセルロースを微生物の力で分解して栄養にしているため、セルロースを主成分とする元気森森®は良い製品だなと感じましたね。また、元気森森®の「pHが安定する」という特性にも魅力を感じました。当時、乾草の価格が非常に高騰していたため、牧草の代わりになるかもしれないと考え、社長に相談しました。

木下博:以前木質系の飼料を実験的に1年間使用したことがありました。その時の経験もあったので木質系飼料に関して違和感はなくて。私は元気森森®の「高エネルギー源」の機能に惹かれましたね。ただ私たちの会社では、使用する原材料は全てアメリカで分析し、その数値を基に飼料計算を行い、飼料設計をしているので、まずは元気森森®を分析しました。

新素材のチカラを引き出す分析

元気森森®の使用を判断した経緯について教えてください。

木下博:昔はエコフィードなどを使用する飼料は、「空想から科学」と良く言われていました。「このエサは、どうしてエサになるのか?」そこには科学的根拠さえ持てば未利用資源や新規素材でも餌になるという意味が含まれています。ヒトの感覚で「安いから使う」のではなく、分析値により、使うかどうか判断します。お客さまからのご要望の素材でも、数値を大切にしながら対応するようにしています。

木下太: 2023年1月から元気森森®のテストをしました。水分が高いので使用量など検討しましたね。同年3月に元気森森®の本採用を決定しました。

木下社長と木下営業担当が笑顔で語る現場のリアル

元気森森®配合で飼料の質感が「ベチャ」から「フワッ」に変化

実際に元気森森®を使用した使用感はいかがでしたか?

木下太:私たちは日々さまざまな素材を使用して飼料を製造しているので、元気森森®を使用することに対して抵抗感はありませんでした。我々の発酵TMRは、牛の選り食いを防止するために水分を高めて、「ベチャ」とした質感になりやすいです。牛はこの「ベチャ」とした質感の方が食べやすいですが、「フワッ」とした方が人間の作業性が良くなります。元気森森®を配合することで、TMRの質感が「ベチャ」から「フワッ」に変化します。この質感の変化は元気森森®がほかの飼料の水分を吸収し保持するからだと思いますね。

木下博:作業性が悪い質感の飼料だと作業する方の手が痛くなることもあります。元気森森®を入れることで発酵飼料の質感が変化、飼料を製造するための素材として元気森森®は十分に役に立っていますよ。現在当社のウェット製品「KSミックスOI」「KSミックスOM」他5ラインに元気森森®を混合しています。

元気森森®を飼料にプラス

初採用は沖縄県のお客さま。乳脂肪率が昨年比でUP!

実際に元気森森®を配合した飼料を使用したお客様について教えてください。

木下太:飼料設計が良いのか(笑)、元気森森®を配合した製品では夏場は特にアシドーシスが起きにくいと農家の方々から声を多く聞きましたね。第一胃のpH安定が効いたのではないかと。採用第一号はなんと沖縄県でした。乳脂肪率が昨年比で0.2%向上するという嬉しい効果をお聞きすることができました。

木下博:以前沖縄県で発酵飼料に関する講演会に登壇しました。このご縁がきっかけで沖縄でのビジネスを始めました。当社は那覇市に倉庫を借りて、石垣島や宮古島など離島への配送が可能です。2024年3月には、沖縄営業所に職員を1名配置し、販売を強化しています。沖縄の酪農家では、20~40㎏/頭・日の飼料を給与しており、離島での少数頭飼育に対応するため、20㎏袋の飼料が人気です。沖縄で現在元気森森®を配合した製品で流通しているのは、「KSミックスOM」です。ちなみにOMは沖縄モデル(OkinawaModel)の略です。

木下太:当社はお客さまのご要望に応じて既製品に+αでオーダーメイドの飼料も製造しています。栃木県だけではなく、埼玉県、福島県、宮城県などにも出荷しています。特に既製品に関しては宮城県南地区から多くをご注文いただいていますね。

持続可能な飼料製造のこれから

木下太:農家のみなさんが模索している新しい飼料の導入をサポートし、農家の皆さんと企業の架け橋となって多様な畜産の可能性を示していきたいですね。これからも私たちは新しいことに挑戦し、新しい国産の原料を活用した発酵飼料を製造していきます。

木下博:これからも農家の皆さんの異なる課題に対して丁寧にヒアリングし、満足のいくエサをお届けしていきます。元気森森®は、食と競合しない循環型社会に貢献できる製品であり、これからも楽しみにしています。

未来へ繋ぐ従業員の皆さん

聞き手:日本製紙 バイオマスマテリアル・コミュニケーションセンター
取材日:2025年4月17日
写真:日本製紙撮影