畜産用サプリメント「トルラプラス®」「RNA-M」
木の恵みからトルラ酵母を育む
化成品研究所
山口県岩国市にある化成品研究所は1949年10 月に設立されました。現在は塗料やインキ、接着剤などに添加される機能性コーティング樹脂および合成系分散剤、バイオ技術やノウハウを生かした発酵製品を研究、開発しています。
化成品研究所(山口県)
情報なき道を開拓 日本製紙が誇るトルラ酵母
学生時代は主に稲を対象に研究をしていました。そのような中で環境問題に強い関心を持ち2004年に日本製紙に入社しました。以来、一貫して木材成分の一つであるヘミセルロース由来の糖を栄養源とする「トルラ酵母」を応用した飼料用サプリメントの開発研究に携わっています。トルラ酵母はニッチな酵母なので、情報がなかなか見つからないことが唯一の難点です。少しでも情報を得るために工場や研究OBに直接聞きに行ったり、数少ない文献を探して読み漁ったりしました。現在では、ここ岩国での知見の積み重ねが、世界的に見てもスタンダートだと思いますね。
ドイツの食料難から発見されたトルラ酵母
もともとこの技術のスタートというのが第一次世界大戦でドイツが食料難に陥った時でした。紙パルプの排液には大量の「糖」が存在することから、この糖を有効活用できないかと研究し、発見されたのがトルラ酵母だったそうです。そして日本に技術が伝搬し、江津工場で取り扱うようになりました。今で言ったらバイオリファイナリーのさきがけですよね。私はこの技術に深く惹かれ、日々研究開発を行えることに大きな喜びを感じています。
高ストレス環境下でも旺盛な繁殖力と豊富な栄養成分
酵母の業界では、これまで伝統的に用いられてきたワイン酵母やビール酵母、パン酵母などが主流であり、トルラ酵母はそれらと一線を画して「ノンコンベンショナル(型にはまらない)」酵母と言われることがあります。さらに亜硫酸で蒸解した木質スラリーというほかの微生物が生存できないような高いストレス環境下においても旺盛な繁殖力を見せるととともに、その中には豊富な栄養成分をふんだんに含んでいることが知られています。
新生児用粉ミルクの知見を応用したRNA-M
RNA(リボ核酸)は、昔から新生児用の粉ミルクの原料に利用されてきました。母乳にはRNA系の成分が豊富に含まれており、赤ちゃんの健やかな成長に大きく寄与するため、粉ミルクにも多く配合されています。この人間用に培われてきたRNAの機能は、動物にも有効なのではないかという仮説が、私たちの製品開発の大きなきっかけとなりました。開発当初は、主に獣医学科や学術機関との共同研究を通じて基礎データを積み重ねてきました。現在ではその有効性が立証され、水産現場で広く適用されています。特にRNA-Mでは、ブリの類結節症*に対して高知大学との共同試験で効果が確認されるなど、具体的な成果も出ています。
*類結節症:ブリやカンパチなどの養殖魚類に甚大な被害を与える、Photobacterium damselae subsp. piscicidaを原因菌とする致死性の高い細菌性感染症
三位一体で乗り越えた2021年のトルラプラス®上市
2021年に上市したトルラプラス®は、酵母中のRNAの効果を最大限に発揮する1+1=4になるような処方を開発しました。そして工場の実機にてトルラプラス®を製造したのですが、納得がいく製品に仕上がるまでに何度もトライ&エラーがありました。どうやったら製造現場でうまくいくか、試行錯誤を重ね、何度も話し合い、研究開発部門だけでなく製造部門や営業部門などの多くのメンバーの知恵や協力を得て三位一体で作り上げてきました。初めて上市・販売に至った時はうれしかったです。各部門の担当者全員が「製品化」という明確なゴールを描いていたので、頑張ることができたと思います。ちなみに製品名の候補として「トルラエナジー」とか「トルラマッスル」という候補があったそうです。いずれにせよカラダに良いイメージですよね。
One Healthで未来の食をサポート
トルラプラス®とRNA-Mは、双方とも「増体重」「免疫作用の安定化」「腸の健康への貢献」の3本柱を軸に水畜産物の健康をサポートする製品です。最近では新型コロナウィルスに続く次のパンデミックを防ぐキーワードとして、「One Health」という言葉が注目されています。One Healthとは人間・動物・生態系の健康を一体として捉え、持続的な未来を目指す包括的なアプローチを指します。これからも家畜の健康を支え、安全な水産物、食肉・乳製品の供給を支え、そして私たちの健康にもつながり未来の食をサポートし貢献し続けていけるような研究開発を進めていきます。
