江津と岩国の連携が生む新たな価値
岩国工場
山口県岩国市に位置する岩国工場は、1939年(昭和14年)にパルプの生産から始まりました。瀬戸内海に面しており、原料の搬入から製品輸送までが容易で、豊富な用水と安価な鉱物原料の確保が可能な立地条件に恵まれています。現在では、洋紙と化成品の両分野を製造する、グループ唯一無二の「二刀流」の工場として、多角的な事業を展開しています。
多角的な視点で挑む化成品製造部のメンバー
まずは簡単な自己紹介をお願いします。
増本:化成品製造部の増本です。当部は二つの課で構成されており、一課ではリグニン製品を、二課では主に機能性コーティング樹脂を製造しています。私は主にケミカル分野での経験が長く、現在の化成品研究所、江津や岩国での製造課長を経て、2025年6月から岩国化成品製造部の統括を務めています。
佐伯:私は化成一課長としてリグニン製品の製造管理のみならず、在庫管理や営業と工場間での生産調整などを担当しています。日本製紙に入社する前は全く異なる業界にいました。入社当初は工務系で、それから江津、岩国、勇払、本社とさまざまな工場や部署を経験し、現在に至ります。
藤倉:私は化成品製造部のスタッフ業務を担当しています。最初は草加工場の工務系でしたが、途中から製造系への異動を経て、3年前に岩国工場に赴任し、現在に至っています。化成品事業という予想外の異動でしたが、これも何かの縁だと感じていますね。
バッテリーから農業まで リグニンの可能性
リグニン関連の製品について教えてください。
増本:木材は主にセルロース、ヘミセルロース、そしてリグニンという三大構成要素から成り立っています。島根県江津工場では、サルファイトパルプ(以下、SP)製造過程で得られるセルロースを利用してサンローズ(CMC)、KCフロックおよびセレンピア®、ヘミセルロースを利用した発酵事業としてトルラプラス®とRNA-Mなどを生産しています。そして、江津工場で生産されるリグニンもまた、貴重な資源として余すことなく岩国工場や江津工場で活用しています。
佐伯:リグニンを原料とした製品の中で一番多く製造されているのが黒色粉末品の「バニレックス®」です。主に鉛蓄電池の電極ペーストに添加し充放電によるペーストの収縮を抑制する防縮剤として供給しています。
藤倉:現在、バニレックス®20kg粉体の包装は手作業で行っていますが、今夏には包装自動化工事が完了し本稼働の予定です。
佐伯:またリグニンには古くから肥料の吸収を高める効果も確認されています。「サンエキス®」は、肥料や農薬を粒状に加工する接着剤の役割を発揮しながらも、田畑で実際に使われるときには水に溶けやすくする効果もあるため、肥料や農薬に混ぜて使用します。
増本:ほかにもまだたくさんの製品があり、リグニンは、私たちの想像以上に多岐にわたる分野で活用されています
藤倉:ここ岩国工場では、私たちの化成品とは別に紙も製造しています。紙の製造には主にクラフトパルプ(以下、KP)が使われますが、私たちが化成品で利用しているのはSP由来のリグニンで、KP由来のリグニンとは全くの別物です。KP由来のリグニンも、もちろん余すことなく活用されており、工場内のボイラーで燃料として使用されています。
先人たちによるバイタリティの賜物「スーパークロン®」
リグニン関連以外の製品についても教えてください。
佐伯:販売主力製品は「スーパークロン®」です。スーパークロン®は塩素化ポリオレフィンで、自動車関連部品やフィルム印刷関連で塗料やインキ用途として使用されています。
増本:スーパークロン®は一見、紙ともリグニンとも結びつきませんよね。私もスーパークロン®のはじまりは過去の文献で学びました。紙の製造工程で中和用に使う苛性ソーダや、かつて漂白に使っていた塩素を、岩塩を電気分解して場内で生産していたそうです。苛性ソーダは使い切れるが塩素は余る。そこでその塩素の有効活用の一環として、プラスチックを塩素化して何かつくろうという事業がはじまったそうです。当時、主任クラスの担当者が上司から「塩素の有効利用策を考えるように」と指示されたことが、この事業の出発点だったそうです。
藤倉:先人たちのバイタリティと発想力、そしてそれを認め、後押ししてくれた上司の方々がいたからこそ、この画期的なビジネスが生まれたのですね。
「忍(しのび)」としてお客様の満足を第一に
今後の化成品製造部の展望について教えてください。
増本:ケミカル分野は成長分野であり、会社からの期待をひしひしと感じています。化成品製造部は、自信を持って言えるほど雰囲気が良い部署です。根幹にあるのは「木」から生まれるパルプや紙を作るための技術や素材であり、それをいかに有効活用するかは「人」にかかっています。前向きなメンバーが多く、日頃の雑談からコミュニケーションを密に取り、良い雰囲気づくりを心がけています。
藤倉:増産や新規開発、設備導入といった前向きな案件が非常に多い印象がありますね。やりがいを実感しながら業務にあたっています。
佐伯:私たちは、これまで培ってきた技術と素材を継承し、さらに発展させていく責任があります。私たちの製品も、最終消費者が直接目に触れる機会が少ない「素材」ですが、だからこそ、その根幹を支える重要な役割を担っていると自負しています。
増本:会社が合併する前の「日本製紙ケミカル株式会社」には、「忍」を模したキャラクターがいました。ケミ丸、おケミ、ケミ衛門の3人衆です。忍が隠れて力を発揮し、現場を動かすように、私たちもまた、全てを知ってもらうことよりも、素材としてお客様に満足していただくことを第一とするマインドを大切にしています。私たちはこれからも、この「忍」のマインドを継承し、事業を発展させていきたいと考えています。
化成品製造部化成一課リグニン係長 寺崎剣也
岩国工場化成品製造部
部長 増本晃二
部長代理 佐伯武彦
技術調査役 藤倉正俊
取材日:2026年1月28日
企画:バイオマスマテリアル・コミュニケーションセンター
写真:日本製紙株式会社
