セルロールナノファイバー「セレンピア®」

現場の声を研究に反映させることで実用的な製品開発を目指す

富士革新素材研究所 CNF研究室Ⅰ
三浦あかり

富士革新素材研究所は紙のまち富士市で、再生可能な「木」から得られる木材繊維(パルプ)を原料とする新製品・新素材を革新的に研究開発しています。食品や化粧品用途で使用できるセルロースナノファイバー「セレンピア®フード」「セレンピア®ビューティ」の研究開発拠点です。

富士革新素材研究所(静岡県)

現場の声を研究に反映させることで実用的な製品開発を目指す

日本製紙では食品や化粧品用途で使用できるセルロースナノファイバー「セレンピア®フード」「セレンピア®ビューティ」の研究開発を行っている。

さまざまな独自の機能性を実現

私が扱っているセレンピア®はCM化CNF(カルボキシメチル化セルロースナノファイバー)という種類のもので、食品と化粧品のグレードになっています。人体に触れても安全な化学修飾が施されている点が特徴で、さまざまな機能を発現できることが強みです。特に、少量の添加で高い効果を発揮し、ほかの増粘剤とは異なり繊維が水中に残ることで、独自の機能性を実現しています。

食品分野で一番よく知られているのはどら焼きで、生地やあんこに使用され、気泡安定性や保水性の向上に貢献しています。生地の気泡がきめ細かくなり、食感や弾力が均一になるほか、あんこの水分が生地に移るのを防ぎ、日持ちの向上にも寄与しています。
気泡安定性では、パン、特に膨らみにくいとされる米粉を使用したパンにも用いられています。気泡が壊れにくくなることでふっくらした食感が維持されます。
また、冷凍食品やクリームなどにも応用が検討されており、冷凍・解凍後も品質を保つ効果が期待されています。

化粧品分野では、べたつきやねばつきを抑える低えい糸性がテクスチャーの部分で評価されています。また、日焼け止めなどでは分散安定剤としても活用されています。成分を均一に分散させることで、塗布時のムラを防ぎ、快適な使用感を実現しています。

現場の声を研究に反映

セレンピア®は比較的新しい素材と言われており、用途開発が活発に行われています。お客さまからのご要望や業界の課題に対し、研究を通じて解決策を提案できることが大きなやりがいです。

展示会などで直接お客さまと対話し、現場の声を研究に反映させることで、今後研究として何ができるのかを考えながら、より実用的な製品開発を目指しています。

今後も、プラントベース食品や冷凍耐性食品など、時代のニーズに応じた新たな用途開発に取り組みたいです。

インタビューを受ける三浦さん
比較のために実際に作成した、セレンピア®入りのパン(左)とセレンピア®なしのパン(右)

取材日:2025年5月27日
企画:バイオマスマテリアル・コミュニケーションセンター
写真:日本製紙株式会社