セルロールナノファイバー「セレンピア®」

セレンピア®が当たり前の選択肢として多くの製品に使われることを目指して

富士革新素材研究所 CNF研究室Ⅱ
細川翔也

富士革新素材研究所は紙のまち富士市で、再生可能な「木」から得られる木材繊維(パルプ)を原料とする新製品・新素材を革新的に研究開発しています。工業用途向けのセルロースナノファイバー(CNF)「セレンピア®インダストリー」やCNF配合ゴムマスターバッチ「セレンピア®エラス」の研究開発拠点です。

富士革新素材研究所(静岡県)

セレンピア®が当たり前の選択肢として多くの製品に使われることを目指して

日本製紙は工業用途向けのセルロースナノファイバー(CNF)「セレンピア®インダストリー」やCNF配合ゴムマスターバッチ「セレンピア®エラス」を研究開発している。

セレンピア®インダストリー、エラスについて

当社が開発しているセレンピア®は、主に工業用と食品・化粧品用に分かれています。工業用(セレンピア®インダストリー・エラス)には主にTEMPO酸化CNF、食品や化粧品用(セレンピア®フード・ビューティ)にはCM化CNFを使用しています。私は主にゴム用途の研究開発を担当しており、ゴム製品メーカーの皆さまと連携しながら用途開発を進めています。

TEMPO酸化CNFの特徴は、理論的に最も細いシングルナノ(幅2~4ナノメートル)レベルの繊維径を持つことです。これをゴムに均一に分散させたマスターバッチの開発を行い、さまざまな製品への応用を目指しています。

当社独自のノウハウを活かした開発

CNFは水を多量に含むため、従来はゴム製品メーカーで取り扱いが難しいという課題がありました。ラテックスと混合・乾燥してから使用する方法では、CNFの高粘度が障壁となり、十分に混合できないという声もありました。そこで、当社独自の「CNFの均一分散技術」と「CNFの乾燥技術」を応用し、CNFをゴムに均一分散した固形マスターバッチ、セレンピア®エラスを開発しました。ユーザー側で固体ゴムと容易にブレンドが可能になりました。

広がる可能性

開発は天然ゴムからスタートし、2022年12月からサンプル提供を始めました。その後、お客さまからの要望に応じて合成ゴムへの展開も進め、2025年からは合成ゴムを母材としたマスターバッチの供給も開始しております。

CNFをゴムに配合することで、石油由来のCB(カーボンブラック)の使用量を削減できるため、サステナブルな材料としての価値が高まります。従来の補強材であるCBと比べて同じ補強性能をより少ない添加量で実現できるため補強材の添加量を削減可能で、更に補強材としての比重も小さいので部材の軽量化を図れます。また、着色が可能なため、意匠性の高い製品設計も可能です。

一方で、CNFのコスト面を懸念されるお客様が多いのも現状です。当社はコストダウンについても真摯に取り組んでおり、より良い提案ができるよう努めてまいります。

今後は、ゴム市場の中でも特に規模の大きいタイヤ分野への採用を目指しています。また、合成ゴムのラインナップ拡充も進め、さまざまな部材への適用を加速していきます。将来的には、セレンピア®が当たり前の選択肢として多くの製品に使われることを目指しています。

さらなる取り組みとして

当社は過去に国のNEDO事業でMFC(ミクロフィブリルセルロース)を用いた低コスト化にも取り組みました。MFCでもCNF並みの補強性が得られることを確認しており、現在もコストダウンに取り組んでいます。また、品質のさらなる向上、製品ラインナップ(合成ゴム)の拡充にも取り組んでおり、幅広いお客様ニーズに応えられるよう励みます。

インタビューを受ける細川さん
セレンピア®エラス マスターバッチサンプル

取材日:2025年5月27日
企画:バイオマスマテリアル・コミュニケーションセンター
写真:日本製紙株式会社