ニュースリリース石巻工場にセルロースナノファイバー量産設備が稼働~年間生産能力500トン、幅広い工業用途の開発を加速~

日本製紙株式会社

日本製紙株式会社(社長:馬城 文雄)は、石巻工場(宮城県石巻市)にセルロースナノファイバー(以下「CNF」)量産設備の建設工事を進めてまいりましたが、このたび計画通りに完工し、稼働を開始しました。

  

石巻工場のCNF量産設備


石巻工場のCNF量産設備は、TEMPO触媒酸化法(注1)により化学処理した木材パルプから繊維幅が3~4nmと均一に完全ナノ分散したCNFを生産することができる設備です。TEMPO酸化CNFは、透明で、様々な機能付与が可能であることが特徴的なCNFで、当社は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ナノテク・先端部材実用化研究開発」事業(2007~2012年)における基礎的な研究開発を基に、2013年に岩国工場(山口県岩国市)に実証生産設備を設置し、技術開発を進めてきました。
2015年には、世界で初めてTEMPO酸化CNFに抗菌・消臭機能を付与してシート化し、当社グループの日本製紙クレシア株式会社(社長:南里 泰徳)の大人用紙おむつ「肌ケア アクティ®」シリーズに実用化しました。現在では、同社の軽失禁用ケア商品「ポイズ®」シリーズにも抗菌・消臭機能を付与したCNFのシートを使っています。

  

TEMPO酸化CNFを抗菌・消臭シートとして実用化した日本製紙クレシアの製品

(左:「肌ケア アクティ®」シリーズ、右:「ポイズ®」シリーズ)



TEMPO酸化CNFは、機能性シートだけでなく、機能性添加剤やナノ複合材など、幅広い工業用途での実用化が見込まれています。今回石巻工場で量産設備が稼働したことにより、事業化に向けた展開を加速していきます。

さらに、当社は本年、石巻工場に続いて、6月には富士工場(静岡県富士市)でCNF強化樹脂(注2)の実証生産設備を、9月には江津事業所(島根県江津市)で食品や化粧品向け添加剤用途のCM化CNF(注3)の量産設備を稼働します。「木とともに未来を拓く総合バイオマス企業」として、用途に応じたCNFの製造技術と本格的な供給体制を早期に確立し、新素材・CNFの市場創出を進めてまいります。

なお、石巻工場は、印刷・情報用紙の生産に加えて、2015年12月に加熱改質フライアッシュ「CfFA®(Carbon-free Fly Ash)」の製造設備を稼働し、リサイクル事業を開始しました。また、現在、石炭・木質バイオマス混焼による発電設備を建設中で、2018年3月に運転を開始する予定です。今回、CNFの生産拠点として量産設備が稼働したことで、当社の基幹工場としての基盤がより一層強化され、将来にわたり、人々の豊かな暮らしと文化の発展に貢献してまいります。


(注1)東京大学大学院農学生命科学研究科 磯貝 明教授らが開発した、TEMPO触媒によるセルロースの化学変性方法。これにより、パルプが解繊しやすく均一な幅のナノファイバーを得られる。

(注2)ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)、ナイロンなどの樹脂にCNFを混練することにより強度を付加したもの。

(注3)食品添加物として既に販売されているカルボキシメチルセルロース(CMC)の製造技術を用いて化学変性した木材パルプから得られた、繊維幅が数nm~数十nmのミクロフィブリルセルロース。



以上