ニュースリリースニホンナシの高品質な安定生産方法を共同開発~独自技術により挿し木苗の発根率を改善、果実生理障害発生を低減~

日本製紙株式会社
栃木県農業試験場

日本製紙株式会社(社長 芳賀義雄)と栃木県(知事 福田富一)は、2006年より高品質なニホンナシの果実の安定生産方法に関する共同研究を進めてまいりましたが、このたび、ニホンナシの苗が良好に生育し、且つ近年の課題であった果実生理障害を低減させる生産技術を開発しました。

ニホンナシは、「幸水」や「豊水」の品種がよく知られており、この2品種で全国のニホンナシ生産量の60%以上を占めています。栃木県は国内の主要なニホンナシの産地ですが、植え付けから30年以上が経過したニホンナシの樹木が多く、高樹齢化による品質と収量の低下が問題となっていました。ニホンナシの苗は接木で供給されており、野生種であるヤマナシやマメナシの種子由来の苗を台木として用いています。種子由来の苗は遺伝的に多様であるため、栽培品種である「幸水」や「豊水」などの接木苗の生育がばらつく、或いは、コルク状果肉障害(注1)やみつ症(注2)などの果実生理障害が見られるなどの問題が生じています。特に近年では、夏の異常気象により果実生理障害が多発するようになり、問題の克服が求められていました。

そこで、従来ニホンナシの挿し木増殖は非常に困難でしたが、日本製紙の独自の発根技術である「光独立栄養培養技術」(注3)を用いて取り組んだところ、「幸水」や「豊水」の発根率は60%以上に改善され、挿し木苗を効率的に生産することができるようになりました。さらに栃木県農業試験場において、これらの挿し木苗を「盛土式根圏制御技術」(注4)を用いて栽培した結果、従来の接木苗と比較して、苗の生育が良好でよく揃っていること、また「豊水」では果実生理障害の発生を低減できることが確認できました。

日本製紙と栃木県は、今回開発した高品質で安定的に果実を生産できる技術の適用・拡大をはかり、ニホンナシの有用品種の普及を促してまいります。
なお、このたびの共同研究の成果は、9月24日から岡山県で開催される園芸学会で発表する予定です。

  1. 注1コルク状果肉障害
    果実内にコルク状の褐色を伴う生理障害。「あきづき」「豊水」「王秋」で発生が見られる。(別紙1)
  2. 注2みつ症
    果実の一部または広い範囲が水浸状となり、症状が進むと果肉が潤んだようになる。日持ちが悪くなり、商品価値が著しく低下する。(別紙1)
  3. 注3光独立栄養培養技術
    組織培養でエネルギー源となる糖の替わりに高濃度の二酸化炭素と水と光を施用することで植物自身が持つ光合成能力を引き出す培養方法。(別紙2)
  4. 注4盛土式根圏制御技術
    遮根シートによって地面と隔離した少量の培土(盛土)に苗を植え付け、樹の成長に合わせた灌水を行う方法。密植が可能であるため、単位面性当たりの果実の収量が多くなる。(別紙3)

以上