ニュースリリースTEMPO触媒酸化処理によるセルロースナノファイバーを実用化~消臭、抗菌などの機能性を持つシートとしてヘルスケア事業へ展開~

日本製紙株式会社

日本製紙株式会社(社長:馬城 文雄)は、TEMPO触媒酸化法(注1)により化学処理したパルプを原料とするセルロースナノファイバー(以下、「CNF」)を用いて、触媒、消臭、抗菌などさまざまな性能を有する機能性シートの実用化に成功しました。製品化第1弾として、CNFを配合した高い消臭機能を持つシートを使って、当社グループの日本製紙クレシア株式会社(社長:南里 泰徳)において今秋から、需要の伸長が著しい「ポイズ®」シリーズ、「アクティ®」シリーズなどのヘルスケア製品への展開を図っていきます。

CNFは、植物繊維(パルプ)をナノレベルまで細かく解繊したもので、軽量でありながら、弾性率は高強度繊維で知られるアラミド繊維並に高く、温度変化に伴う伸縮はガラス並みに良好、酸素などのガスバリア性が高いなど、優れた特性を発現します。また、植物繊維由来であることから、生産・廃棄において環境負荷が小さいことが特徴として挙げられます。当社は、2013年10月に岩国工場(山口県岩国市)にCNF実証生産設備(年産能力30トン/年)を設置し、大量のサンプル製造と用途開発に取り組んでいます。

このたび、当社は、TEMPO触媒酸化法により化学処理されることで、CNFの表面に金属イオンや金属ナノ粒子を高密度に付着させることが容易であるという特徴(注2)を生かし、紙や板紙、不織布、フィルムに配合・塗布することでシート化することに成功しました。付着させる金属の種類を変えることにより、触媒、消臭、抗菌など、ユーザーから求められるさまざまな性能や機能をシートに付与することが可能であり、また、ナノファイバー化されていることから比表面積が大きく、少量の添加で機能を効果的に発現することができるという利点があり、今後の用途展開が期待できます。

当社グループは、再生可能な森林資源を高度に利用する技術力により、人々の暮らしを支える分野へ事業領域の拡大を図っています。CNFはその中核となる新素材として位置付けており、今後さらに技術開発に力を注ぎ、速やかな量産化技術の確立と幅広い産業分野への用途開発を進めていきます。

  1. 注1東京大学大学院農学生命科学研究科 磯貝 明教授らが開発した、TEMPO触媒によるセルロースの化学変性方法。これにより、パルプが解繊しやすく均一な幅のナノファイバーを得られる。
  2. 注2九州大学大学院農学研究院環境農学部門 北岡 卓也教授らが開発した、TEMPO触媒酸化法により化学処理させたセルロース表面に金属ナノ粒子を生成させる方法。

以上