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気候変動問題への対応

気候変動問題への対応

気候変動問題は、地球規模で喫緊の社会課題であり、私たちの社会と経済に大きな影響を与えています。日本製紙グループは、この重要な社会課題に対し、総合バイオマス企業として真摯に向き合い、その解決に貢献することが責務であると考えています。
私たちは、事業活動における温室効果ガス排出量の削減はもとより、森林資源の適切な管理・育成・活用、再生可能エネルギーの導入、革新的な技術・製品開発を通じて、サプライヤーや地域社会など、ステークホルダーの皆様と連携し、気候変動問題の解決に向けて積極的に行動してまいります。

基本的な方針

当社グループは、「日本製紙グループ2030ビジョン」の基本方針のひとつに「GHG削減、環境課題等の社会情勢激変への対応」を掲げ、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、温室効果ガス(GHG)削減とグリーン戦略に取り組んでいます。
基本方針を実践するために、「日本製紙グループ環境目標2030」において、GHG削減ならびに適切な森林管理によるCO2吸収に関する数値目標を掲げ、この達成に向けて取り組みを進めています。

気候変動問題への対応_図1

日本製紙の主力事業である紙パルプ産業は、エネルギー多消費型産業であり、カーボンプライシングやエネルギー政策などの導入による移行リスクの影響を大きく受けます。当社グループでは、この影響を低減するために、GHG削減施策を加速すると同時に、政策、市場動向などを常時モニタリング、リスクを特定・評価する体制を整備し、環境経営の推進体制に組み込むことで、当社グループの経営戦略との連動を図っています。

シナリオ分析

当社グループはTCFD提言に基づき、気温上昇を想定した2種類のシナリオ(1.5℃シナリオ、4℃シナリオ)を用いて、2030年および2050年時点での気候変動リスク・機会が財務計画に与える影響についての定性・定量評価を行っています。
気温上昇が比較的緩やかに抑えられる1.5℃シナリオにおいては、気候変動政策導入と市場ニーズの変化などの移行要因が大きなリスクとなります。他方で、気温上昇が急激に進む4℃シナリオでは、異常気象・激甚災害の増加などの物理的要因も大きなリスクとなります。これに対し当社は、省エネルギー対策や燃料転換によって、早期にGHG排出量削減を進めることでリスクを回避し、戦略的レジリエンスを確保していきます。
一方、いずれのシナリオにおいても、気候変動政策の導入や市場ニーズの変化により、エシカル消費需要やバイオマス・環境配慮型製品等の市場が創出・拡大し、当社が強みを活かして市場に参入し、成長する機会が多く存在します。また、激甚災害などへの備えなど、気候変動への適応は、ある程度必須と考えられることから、防災衛生用品や長期保存紙容器などの適応製品の需要拡大も、当社グループにおける成長の機会となります。

リスクと機会

シナリオ分析に基づくリスクと事業機会については、財務影響や市場拡大に伴う当社へのインパクトを含めた評価を行っています。

 

気候変動関連リスク

2030年時点でのリスク
要因 当社グループへの影響
財務影響
1.5℃シナリオ
4℃シナリオ
移行要因
政策導入
炭素価格、エネルギー調達コストが増加する
大※
小※
燃料転換・省エネの設備投資費用が増加する

原材料調達コストが 増加する
植林事業地の
買収コストが増加する
市場ニーズの変化
認証材チップの
調達コストが増加する


環境負荷低減のための開発コスト、 設備投資費用等が増加する

小~中
再生可能エネルギー以外の発電事業の売上が減少する
物理的要因
激甚災害の増加
(台風・豪雨の頻発)
原材料調達・生産・製品輸送などの停止により生産量が減少し、 納品の遅延・停止が発生する
中~大
調達・製造・物流コストが増加する
取水する河川等の濁度上昇により生産停止が発生し、製品の納品遅延・停止が発生する

気温の上昇・降水パターンの変化
自社の植林資産に損失が生じる
原材料が調達困難となり、 調達コストが増加する
代替資材の探索、技術開発コストが増加する
品質の維持が困難になり販売量が減少、あるいは販売価格が低下する

※ 影響額 小:100億円未満、中:100億円以上500億円未満、大:500億円以上
※以外は定性評価
炭素価格はIEAによるNZE(Net Zero Emissions)シナリオに基づき設定

 

事業拡大の機会

2030年時点での機会
要因 当社グループの機会 当社グループの強み 市場成長
1.5℃
シナリオ
4℃
シナリオ
移行要因
政策導入
(炭素賦課金、エネルギー 構成の変化など)
再生可能エネルギーの導入が進む
発電施設設置場所の需要が増加する
・国内社有林・敷地等
・国産材調達網
・バイオマス燃料製造技術
・非化石燃料調達網
・既設ボイラーの活用


拡大
維持
バイオマス燃料の需要が増加する
RPF、廃タイヤなどの廃棄物系燃料の活用が進む
次世代自動車の普及が進む
蓄電池が普及し、蓄電池用原材料の需要が増加する
・CMC技術・生産設備
・CNF技術・生産設備

大きく拡大
拡大
自動車などの軽量化ニーズにより、CNFの需要が増加する
炭素クレジット市場が活性化する
森林吸収クレジットの需要が増加する
・国内社有林
・エリートツリー苗事業
・海外植林事業
・森林管理技術
・育種・増殖技術

大きく拡大
維持
資源供給国の政策強化で資源が入手困難となる
国産材の需要が増加する
・国内社有林
・国産材調達網
・エリートツリー苗事業
・ステークホルダーとの協働

拡大
維持
古紙の需要が増加する
・古紙調達網(未利用古紙含む)
・ステークホルダーとの協働

カーボンリサイクルが進む(炭素資源の活用)
森林による炭素固定と活用の需要が高まる
・高効率CO₂固定効率樹木の育種技術
・国内社有林
・エリートツリー苗事業
・海外植林事業

拡大
維持
木質由来CO₂を利用した化学原料の需要が高まる
・バイオマス由来CO₂供給インフラ(回収ボイラー)
・化学的CO₂固定・利用技術

大きく拡大
維持
地方分散型社会への移行
エネルギーの地産地消が進む
小口の燃料需要が増加する
・国産材調達網
・国内社有林
拡大
維持
製品の消費地が分散する
各生産拠点から出荷対応すると同時に、物流時のCO₂排出を抑制した製品を販売する機会が増加する
・生産拠点の複数化
拡大
維持
市場ニーズの変化
環境配慮型製品の需要が増加する
脱石化により紙化ニーズが高まるなど、バイオマス素材の需要が増加する
・木質バイオマス素材開発技術(CNF、紙製包装材料、 液体容器、機能性段ボール、バイオコンポジットなど)
・リグニン抽出・活用技術
・未利用古紙リサイクル技術

大きく拡大
拡大
リグニン製品の需要が増加する
持続可能な森林由来の原材料を使用した紙の需要が増加する
・森林認証材の調達網実績
・優良サプライヤーとの信頼関係
・持続可能な自社林経営

拡大
拡大
畜産業由来GHG排出量を抑制する製品の需要が増加する
・セルロース材料利用技術
拡大
維持
環境負荷の低いハロゲンフリーの樹脂の需要が増加する
・機能性コーティング樹脂アウローレン®の需要増
拡大
拡大
持続可能な航空燃料の需要が増加する
・木質資源からのバイオエタノール製造技術
・複数のクラフトパルプ製造設備
拡大
拡大
物理的要因
激甚災害の増加
製品の安定供給要請が強まる
柔軟なBCP体制が確立したサプライヤーからの購入ニーズが高まる
・生産拠点の複数化
拡大
大きく拡大
海外の原材料調達先や物流網が被害を受ける
国産材の需要が増加する・国内の再造林面積増によりエリートツリー苗の需要が増加する
・国内社有林
・エリートツリー苗事業
・古紙調達網
・国産材調達網
・森林管理技術
・育種・増殖技術
・非化石燃料調達網
・ステークホルダーとの協働
・未利用古紙リサイクル技術
拡大
大きく拡大
古紙の需要が増加する
国内廃棄物系燃料およびバイオマス燃料の需要が増加する
建設物の強度向上のニーズが高まる
コンクリート混和材などの需要が増加する
・コンクリート用混和材(フライアッシュ)技術
拡大
拡大
長期保存食品の需要が高まる
長期保存可能なアセプティック紙パックの需要が増加する
・トータルシステムサプライヤー
拡大
拡大
気温の上昇・降水パターンの変化
植物の生長量が低下する
環境ストレス耐性樹木の需要が増加する
・育種・増殖技術
拡大
拡大

指標と目標

当社グループは、長期目標として2050年カーボンニュートラルの実現を宣言し、削減のマイルストーンとして、「2030年度のGHG排出量(Scope1+2)2013年度比54%削減」の中期目標を掲げています。

※エネルギー事業分野を除く製造に関わる排出

中期目標を設定した2021年度以降、積極的に省エネルギーや燃料転換に取り組んだ結果、2024年度の削減実績は41%となりました。

気候変動問題への対応_図2

日本製紙グループ GHG排出量(2024年度)

Scope 排出量 (百万t-CO₂)
Scope1 ※1
4.10
Scope2 ※2
0.94
Scope3 ※3
5.79
  1. エネルギー事業分野を除く製造に関わる排出

  2. マーケット基準

  3. 排出バウンダリおよび各カテゴリの排出量
    Scope1、Scope2
    Scope3

省エネルギーの取り組み

当社岩国工場では、コーター仕上げ室の空調設備について、既設の吸収式冷凍機から、より性能が高いターボ冷凍機に変更することで、少ないエネルギー使用で、より快適な作業環境を整備し、気候変動への適応対策として、従業員の熱中症予防と損紙発生の防止に取り組んでいます。この取り組みにより、更新前と比較してエネルギー効率は88%改善、年間約2,000tのCO2削減効果を見込んでいます。

 

燃料転換の取り組み

当社グループは、重油や石炭などの化石燃料の使用量を削減するために、使用エネルギーにおける非化石エネルギー比率を60%以上とする目標を掲げています。当社では、パルプ製造時に副産物として生成される黒液や建築廃材などの木質バイオマス燃料や使用済みタイヤ、RPFなどの廃棄物燃料を積極的に利用しています。また、日本製紙クレシアでは各工場に、PPA(電力販売契約)による太陽光発電設備を導入しています。
積極的に化石から非化石への燃料転換を進めた結果、2024年度の非化石エネルギー比率は、44%となりました。

※Refuse derived paper and plastics densified Fuel:主に、産業系廃棄物のうち、マテリアルリサイクルが困難な古紙及び廃プラスチック類を主原料とした高品位の固形燃料

使用する燃料全体に占める非化石エネルギー比率(熱量換算)

気候変動問題への対応_図3

事例:高効率黒液回収ボイラーへの設備投資(日本製紙石巻工場)

当社石巻工場では、高効率黒液回収ボイラーを設置することで、石炭ボイラー1基を停止し、GHGを大幅に削減する燃料転換プロジェクトを実施しています。本プロジェクトは経済産業省「排出削減が困難な産業におけるエネルギー・製造プロセス転換支援事業」の交付決定を受けています。これにより気候変動に関わる移行リスク等を確実に低減すると同時に、製造時のGHG排出量の少ないバイオマス素材を環境価値とともに社会に提供することで「グリーン市場の創造」に取り組み、脱炭素と経済成長の同時実現(GX)を目指しています。

〈設備投資計画の概要〉

設置場所
当社石巻工場
投資規模
550億円(うち政府支援上限額:183億円)※1
投資内容
高効率黒液回収ボイラー 蒸発量 390t/h
蒸気タービン・発電機 発電量 56MW
稼働開始
2028年度 第4四半期
GHG排出量削減※2
50万t-CO₂e(当社排出量※3の10%相当)
  1. 採択時

  2. 既存石炭ボイラーの停機による削減効果を含む

  3. エネルギー事業分野を除く製造に関わる排出

事例:廃棄物固形燃料の自製(日本製紙大竹工場)

広島県大竹市にある当社大竹工場では、段ボール原紙の生産工程で発生するペーパースラッジ※1や古紙粕※2を工場内で固形化し、燃料として利用してきましたが、これに加え、2019年4月から大竹市内で発生する廃プラスチックも受け入れ、利用しています。廃棄物燃料の自製化と利用は、石炭使用量の削減、地域の脱炭素化に貢献するだけでなく、最終処分場の延命にも貢献しています。

  1. 主に抄紙の脱水工程において流出するセルロース繊維分や無機物が含まれる製紙汚泥

  2. 古紙を処理する際に発生する異物

事例:バイオマス専焼発電設備(勇払エネルギーセンター)

バイオマス専焼の発電設備として国内最大級の規模をもつ勇払エネルギーセンターは、2023年2月に稼働し順調な操業を続けています。燃料として、木質チップやPKS(パームヤシ殻)のほか、北海道内で発生する林地残材等の未利用木材を使用しています。また、日本製紙石巻エネルギーセンターは、バイオマス高混焼化改造工事(2023年12月完工)を行い、バイオマス比率を26%から42%まで高めることができました。これにより、GHG排出量の削減に貢献します。

勇払バイオマス発電所

環境配慮型製品の開発

当社グループでは、製品ライフサイクル全体を通して環境負荷の少ない素材・製品の提供に向けた取り組みを進めています。

事例:環境配慮型製品「N.Polaris43Mocha」

雑誌本文用紙は、木材を機械ですりつぶして作る「機械パルプ」を多く配合することで、軽量で、嵩が高く、インキが裏側に抜けにくいといった特長がありますが、機械パルプは製造時に多くのエネルギーを使用するため、木材の繊維を化学的な処理で取り出して作る「化学パルプ」に比べて、GHG排出量が多くなりやすいという課題がありました。
「N.Polaris43Mocha」は、当社独自の嵩高技術およびインキ裏抜け防止技術により、従来品の品質特性を保ちながら、化学パルプ100%を実現した雑誌本文用紙です。これにより、従来品と比べて、ライフサイクル全体でのGHG排出量を約20%削減しました。 

※従来の当社製品とN.Polaris43Mochaの製造条件を同等と仮定し、パルプの配合比率のみを変更した場合のライフサイクルGHG排出削減量を試算。

物流工程での取り組み

当社グループは、製造工程でのGHG排出削減に留まらず、物流工程でも、「積載効率の向上」「輸送距離の短縮」を2本の柱としてGHG排出量の削減につながるグリーン物流に取り組んでいます。
トラックなどの自動車で行われている貨物輸送を、一度に大量の荷物を積載した長距離輸が可能な鉄道や船舶の利用へと転換するモーダルシフト化を進めることで、当社の洋紙部門におけるモーダルシフト化率は、83%となっています。
また、同業種あるいは業種を越えて連携することで、混載やさらなるモーダルシフトの拡大に取り組んでいます。

モーダルシフト化率

気候変動問題への対応_図4

事例:日清食品とのモーダルシフト混載輸送を開始

当社は、2024年度に日清食品株式会社(以下、日清食品)と首都圏・関西エリア間の巻取紙と即席麺のモーダルシフト混載輸送を開始しました。従来は関西エリアまでそれぞれのトラックで製品を輸送していましたが、今回の取り組みでは、まず勿来工場でコンテナに巻取紙を、さらに日清食品関東工場で即席麺を積み込み、その後、宇徳ロジスティクス株式会社の内航船で東京港から大阪南港まで海上輸送を行います。これにより、両社の輸送においてGHG排出削減や輸送手段の多様化など物流業界の2024年問題へ対応するとともに、持続可能な社会の構築に貢献していきます。

 

詳細情報は、以下のPDF資料でもご覧いただけます。