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生物多様性の保全

生物多様性の保全

基本的な考え方

日本製紙グループの事業活動は、生物多様性を育む自然界に大きく依存していると同時にさまざまな影響を与えています。そのため、「生物多様性保全に関する基本方針」を制定し、主要な原材料である木質資源や豊富な水資源などの持続的な利用や環境負荷の低減などを通じて、生物多様性と事業活動の調和に努めています。

推進体制

日本製紙取締役会が、GHG排出削減・環境経営推進担当役員やリスクマネジメント委員会から生物多様性保全に関する取り組みの進捗やリスク分析結果等の報告を受け、業務執行を監督しています。

当社をとりまく状況

当社グループは、森林・紙パルプ産業として、生物多様性や自然資本の恵みを享受しながら事業活動を行っています。国際的には、昆明・モントリオール生物多様性枠組みやTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)など、ネイチャーポジティブを求める動きが加速し、自然関連リスクの管理と情報開示が重要テーマとなっています。国内でも、生物多様性国家戦略や30by30の推進などを通じて、企業による自然共生型の森林管理と持続可能な木材利用への期待が高まっています。森林経営や原材料調達においては、生態系への一層の配慮が求められています。こうした環境の変化の中で、当社は事業活動を通じて生物多様性の保全と自然資本の維持・回復に一層貢献していくことが求められており、その実現に向けた取り組みを進めています。

バリューチェーンにおける生物多様性保全

原燃料の調達

原燃料の調達から製造工程、排水処理、GHG排出抑制など、バリューチェーン全体で生物多様性に与える影響の低減に努め、適切に管理された森林から持続可能な木質資源を調達しています。

森林経営における生物多様性保全

  • 国内外の自社林において持続可能な森林経営を行い、生物多様性調査や生態系モニタリングを通じて、特に配慮が必要な地域では環境林分や保護区を設定しています。また、木材生産を行う経営林分では、地域の生物多様性に配慮した施業を実施しています。

  • 森林認証制度の活用を通じて、第三者による確認を受けています。

  • 当社および海外植林子会社の管理する全ての社有林で、森林認証を取得しています。

指標と目標

当社グループではTNFDの情報開示フレームワークに基づき、LEAPアプローチを用いた自然関連リスクの評価を実施し、TNFD提言に基づくグローバル中核開示指標と目標を設定しております。

TNFD提言v1.0に基づく、グローバル中核開示指標


自然の変化要因 測定指標番号 指標 データ(2025年3月時点) 備考
自然の変化要因 (依存・影響)
気候変動

GHG排出量(Scope1,2,3排出量)
Scope1
4.1
百万t-CO₂
Scope2
0.9
百万t-CO₂
Scope3
5.8
百万t-CO₂
土地、淡水、 海洋の利用変化
C1.0
総空間フットプリント
国内社有林
90
kha
国内約400カ所、総面積約9万haの社有林を保有
海外植林地
69
kha
ブラジル約6.5万ha、オーストラリア約0.4万haの植林地を保有
C1.1
持続的な森林管理を行っている面積
国内社有林
90
kha
植林事業の100%に該当
海外植林地
69
kha
汚染/汚染除去
C2.1
排水量
公共水域+下水道
840
百万t
排水中の主要汚染物質濃度
COD/BOD
43
千t
排水中の主要汚染物質濃度
SS
22
千t
排水中の主要汚染物質濃度
窒素
1.5
千t
排水中の主要汚染物質濃度
リン
0.4
千t
C2.2
産業廃棄物発生量
771
千BDt
廃棄物の最終処分量
91
千BDt
有効利用量
680
千BDt
C2.4
温室効果ガス(GHG)以外の大気汚染物質総量
窒素酸化物
9.0
千t
硫黄酸化物
2.1
千t
C3.1
植林事業・紙生産における国内外での森林認証の維持継続率
100
%
FSC®森林認証・PEFC森林認証を取得済み
調達木材において合法性が確認された木材の割合
100
%
サプライヤーへのアンケートを実施

上記表に記載していないグローバル開示指標は対応検討中

目標

カテゴリー 指標 2030年度目標
気候変動への対応
GHG削減
Scope1+2を2013年度比54%削減
エネルギー原単位
前年度比1%削減
森林保全と生物多様性の維持、
ネイチャーポジティブへの取り組み
森林資源保全
林業用エリートツリー苗の1,000万本/年の生産体制構築
育種・増殖技術の活用による森林の生産性向上とCO₂固定量増大
海外植林地におけるCO₂固定効率を2013年比30%向上
植林地の拡大
アジアを中心に10万haめどに植林地の確保
社有林におけるJ-クレジット創出
全国の社有林で20万t-CO₂創出(2027年度まで)
環境負荷低減
製造工程で発生する環境負荷の削減
国内製造拠点における削減率(2018年度比):大気汚染物質、水質汚染物質15%削減
循環型社会の実現
難処理古紙の利用促進
国内において12,000t/年活用

取り組み

事例:シマフクロウ※の生息地保全と木材生産事業の両立 ~日本野鳥の会との協働~(日本製紙)

当社は、公益財団法人日本野鳥の会と協働で、シマフクロウ の貴重な生息地を保全しながら木材生産事業を両立させる取り組みを進めています。

2015年には、社有林でシマフクロウが頻繁に利用する区域での施業制限などを盛り込んだ基準を定めました。2024年には基準を見直し、シマフクロウの行動実態に合わせて生息地を保全しながら木材生産を続けています。

社有林内に設置した巣箱からシマフクロウの複数の雛が無事に巣立っていく姿が確認されており、協働は生物多様性の回復にも貢献しています。

当社は取り組みを通じて、「ネイチャーポジティブ」の実現に貢献しています。

※ 1971年に国の天然記念物に指定され、環境省のレッドリストで絶滅危惧ⅠA類(CR)に指定

日本野鳥の会との取り組み
実施年 取り組み
2010
野鳥保護に関する協定を締結し、北海道東部の社有林にて保護区を設定
2015
北海道東部の社有林で、シマフクロウの生息地保全と森林施業を両立する基準を新たに設定
環境省「生物多様性アクション大賞」受賞
2020
シマフクロウの繁殖を支援するため巣箱を設置
2021
北海道庁「北海道生物多様性保全実践活動賞」受賞
2023
日本製紙グループサステナビリティ講演会で取り組みを紹介
2024
シマフクロウの行動実態に合わせ、2015年に設定した基準を見直し

事例:海外社有地における生物多様性調査の実施(AMCEL社)

AMCEL社(ブラジル)は、約30万ヘクタールに及ぶ社有地のうち約17万ヘクタールを保護区としています。保護区には多くの野生生物が生息しており、希少種・絶滅危惧種が存在する保護価値の高い森林も含まれています。AMCEL社では社有地において、生物多様性に関する調査を実施しています。

AMCEL社の生物多様性保全の取り組み
活動 内容
定期的水質調査
植林地内に水質・水位モニタリング設備を設置し、 定期的に検査
社有地における野生生物の生息状況調査
生態学者と協働で社有地内の野生動物や魚類の生息状況を調査、モニタリングを実施
保護区域内の植生モニタリング
保護区域内で植生のモニタリング調査を継続して実施

事例:西表島で外来植物の駆除活動 ~西表島エコツーリズム協会との協働~(日本製紙)

当社は、2017年に締結した林野庁九州森林管理局沖縄森林管理署との協定に基づき、西表島の国有林約9ヘクタールにおいて、NPO法人西表島エコツーリズム協会と協働で、緊急対策外来種であるアメリカハマグルマの駆除活動や外来植物の侵入状況調査を行っています。世界自然遺産に登録されている同島には国の天然記念物イリオモテヤマネコをはじめとする貴重な野生の動植物が生息しており、外来植物の侵入への対策が必要とされています。活動区域におけるアメリカハマグルマの再生がほぼ見られなくなったという協働の成果を踏まえ、2022年3月、さらに活動を5年間継続するため協定を更新しました。

※ アメリカ大陸原産のキク科の植物で、法面などの緑化用として沖縄県内各地に導入された。繁殖力が旺盛で、生態系への影響が懸念されている

 

事例:コカ・コーラ ボトラーズジャパンとの森林管理における相互連携

当社と当社グループの丸沼高原リゾートはコカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社(以下「CCBJ」)と森林資源および水資源の保全・保護のために相互に連携し、「豊かな水」を育む「健やかな森」を保つための取り組みを協働で進めています。CCBJの埼玉工場と岩槻工場の水源域に位置する当社菅沼社有林(群馬県片品村)の一部区域(1,747ヘクタール)において、水源涵養力維持のため、森林保全・維持管理の活動を推進しています。


リスクと機会への対応

自然への依存と影響の評価結果に基づき、対応が必要な自然関連のリスクと機会を特定しました。事業に関連する生物多様性や自然資本に関わる重要なリスクと機会、および対応策は以下の通りです。

〈優先地域におけるリスク一覧〉
カテゴリー リスク 日本製紙グループの取り組み
物理
異常気象、森林火災による木材生産性低下
・火災保険の利用、監視体制の強化
・樹齢構成の平準化を図ることで、多様で災害に強い森林を造成する
水質汚染や水不足が発生した場合、木材生産性が減少する
・水源涵養林等の保安林を含む社有林における森林管理や再造林の実施による水源保全
生態系の劣化により樹木の生長が低下する
・人工林および二次林においては、樹齢構成の平準化により森林の若返りを図り、森林生態系の多様化を図る
⇒社有林では、更新伐の推進により森林の若返りを図ることによる森林の多面的機能を維持する
⇒第三者の森林では、伐木集材の効率化や新たなバイオマス製品・素材の開発により木材需要を維持・拡大することで、間接的に更新を進める
・当社ユーザーと森林の多面的機能に関する理解を深め、かつ社有林での森林保全・再生活動を促進し、持続可能な森林生態系の維持に努める
政策
保護地域の拡大に伴い、植林化可能地が制限され、木材生産量が減少する
・環境林と経済林のゾーニングを図る
・森林の生産性を高めることで保護すべき貴重な森林への開発圧を軽減する
・経済林であっても貴重な動植物の生息が確認された場合は、NPOなどと協働し、生物種の保護・保全と木材生産の両立を図る
⇒事例:北海道道東社有林で推進しているシマフクロウの保護・繁殖と木材生産の両立を実施
〈機会一覧〉
カテゴリー 機会
日本製紙グループの取り組み
市場
森林の持つ多面的な機能(CO₂、生物多様性、土壌、栄養、水源涵養)に対する経済的価値の向上
・国内社有林において20万t-CO₂相当のJ-クレジットの創出に向けたプロジェクトを進める
・自然資本会計において、ISFCに参加して森林の価値定量化の制度確立に加わることで、国内・海外の所有森林の価値の向上を図る
・自然共生サイトの支援証明書制度などを通じ、第三者と環境保全の取り組みや価値を共有し、持続可能な森林経営を維持する意義を社会全体に広める
持続可能な木質資源への引き合い増加
・開発履歴の確かな森林において、優良樹種やエリートツリーの活用によって森林の生産性を向上させることで、持続可能な木質資源を供給する
森林の生産性向上技術によるビジネス展開
・国内ではエリートツリー苗事業を拡大し、2030年度までに1,000万本の生産体制を構築する(2030年の林業用苗需要は1億本と推定)
・伐木集材技術の開発と普及を進め、林業の一貫コスト低減を図ることで、国内における森林資源ビジネスを拡大する
・海外では優良品種の早期選抜技術、植林技術を既存の植林事業に提供し、当社の海外材調達につなげる
製品
木質資源を原料とした環境配慮型製品の売上増加
・脱プラスチックやサステナブル消費の拡大を背景とした紙・バイオマス由来製品の需要増加に対応し、環境配慮型製品の開発・拡販を通じて新市場の獲得やブランド価値の向上を図るとともに、バイオマス発電やバイオケミカル、セルロースナノファイバー、SAF(持続可能な航空燃料)などでバイオマス素材事業を拡大する

森林認証制度も活用した持続可能な原材料調達・サプライチェーンマネジメントによる環境価値向上
・サプライヤーアンケートやエンゲージメント、現地確認等を含む自社DDSを構築し、サプライチェーンマネジメントを行い、持続可能な木質原材料調達を実現する
・自社DDSを全ての原材料調達に拡大する

環境意識の高まりや不透明な国際情勢から国産木材および由来製品の引き合いが高まる
・当社グループの日本製紙木材が持つ国内最大級の国産材流通網(年間約400万m³)を強みとして、国産材サプライチェーンの強化・拡大を進める
・当社グループでは、製紙原料の国内調達比率は約36%で業界平均26%に比べ高く、安定した調達を実施(2024年度実績)

詳細情報は、以下のPDF資料でもご覧いただけます。