ニュースリリースセルロースナノファイバー(CNF)と日本の伝統工芸「漆」の融合~「エコプロ2017」で、CNFを配合した漆塗料を使った漆器を展示~

日本製紙株式会社

日本製紙株式会社(社長:馬城 文雄、以下「当社」)は、明治大学名誉教授の宮腰 哲雄氏、および漆芸家の石井 昭氏と共同で、日本古来の天然塗料である「漆(うるし)」への、木材から得られる最先端素材であるセルロースナノファイバー(以下CNF、当社製品名「セレンピアTM」)(注)の添加について研究を進めてきましたが、このたび、「セレンピアTM」添加の漆塗料は、通常の漆塗料よりも高光沢、高強度の性能を発揮することを確認しました。

 
「セレンピアTM」添加の漆を塗布した漆器

(制作 漆芸家 石井 昭氏)


漆の木から採取した樹液は、古来、精製することにより、主に塗料として使われてきました。木や紙などを原料とする器物に漆を塗る漆器は、漆の効果により強度が増して長持ちさせることができ、また、塗り上がりの美しさから、日本各地で伝統的な美術工芸品としての歴史を誇ります。

近年、漆の需要増を背景に、漆の塗面の長寿命化など漆自体の性能向上が求められていることから、当社と、宮腰教授および石井氏は、CNFが木質バイオマスであることに着目し、昨年1月より、当社の「セレンピアTM」を漆塗料に添加する共同研究を開始しました。共同研究では、漆塗料へのCNF添加の手法確立とともに、その効果の確認を行ってきましたが、このたび、「セレンピアTM」の添加により、添加しない場合に比べて、塗面の光沢が向上すること、また、曲げ強度は応力として数十パーセント以上アップすることが確認でき、漆の機能性向上に成功しました。
さらに、「セレンピアTM」の添加により、高光沢、高強度に加えて、肉持ち感が良く、経時劣化を遅らせる効果も期待できることから、今後は、伝統と最先端の技術を融合させた新しい漆塗料としての商品開発を進めていきます。

なお、当社は、本年12月7日(木)~9日(土)に東京国際展示場(東京ビッグサイト)で開催される「エコプロ2017」に出展し、当社ブース内に、上述の「セレンピアTM」添加の漆塗料を使用した漆器を展示します。 併せて、漆の研究家、明治大学名誉教授の宮腰 哲雄氏に、漆と当社CNF製品「セレンピアTM」とのコラボレーションについて、特別にご講演いただく予定です。ぜひお越しください。

  

「エコプロ2017」日本製紙グループCNF特別講演

~CNFと日本の伝統工芸「漆」の融合~

講 師 明治大学名誉教授 宮腰 哲雄氏
日 時 12月8日(金) 14時00分
場 所 東京国際展示場(東京ビッグサイト) 東4ホール026(日本製紙グループブース内)



(注)CNF製品「セレンピアTM

セルロース(CELLULOSE)、当社英文社名の頭文字(NPI)を組み合わせた、当社のCNF製品のブランド名。 CNFは、木材の繊維(セルロース)を化学処理、或いは機械処理、またはその両方を組み合わせることにより、ナノサイズまで解きほぐした(解繊した)極微細繊維。製造法により得られるCNFの形態は異なり、化学処理と機械処理を組み合わせるとナノレベルが高くなり、透明性の高いCNFが得られる。
結晶性が高いことに加え、軽量、高強度(引張弾性率はアラミド繊維並)、温度変化による変形が少ない(熱膨張率は石英ガラス並)、などの特長がある。
当社は2017年に入り、4月に石巻工場(宮城県石巻市)にTEMPO触媒酸化によるCNF(TEMPO酸化CNF)、9月に江津工場(島根県江津市)にカルボキシメチル化によるCNF(CM化CNF)の量産設備を稼働させた。さらに、7月には、富士工場(静岡県富士市)において、自動車や家電などの用途を想定したCNF強化樹脂の実証生産設備を設置した。



以上