ニュースリリースゲノム情報を利用した選抜育種技術(ゲノミックセレクション)で事業用クローンを開発~森林遺伝育種学会第12回大会で発表~

日本製紙株式会社

日本製紙株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:野沢 徹、以下「当社」)は、11月10日、東京大学で開催される「森林遺伝育種学会第12回大会」に参加し、ゲノム情報を利用した選抜育種技術(ゲノミックセレクション)※1で事業用クローンを開発した内容について発表します。

当社は、持続可能な木質資源の調達を推進する一環として、約30年にわたり海外植林事業を行ってきました。特に、ブラジル北部アマパ州では、AMCEL社※2で当社グループ最大の植林面積を持つ植林事業を展開しています。

近年、当社はAMCEL社の植林地をフィールドとして育種技術の開発を進めてきました。ブラジルにおけるユーカリの一般的な育種プログラムでは、複数回の選抜試験を実施し、12年以上の期間をかけて、事業用に利用するユーカリクローンを選抜しています。

この開発期間を短縮させるために、ゲノム情報を利用して、苗の段階で将来の特徴を予測し、優良個体を選ぶ選抜育種技術(ゲノミックセレクション)に2014年より取組んできました。2017年に開始した実証試験では、主力事業用クローンよりも森林蓄積量※3に優れるクローン(森林蓄積量≒CO2吸収・固定効率で11%向上:試験データ)を、播種からわずか4年9か月で開発しました(写真1)。開発したクローンは、10万本以上の苗生産を行い、今年100ha程度の商業植栽を開始しています(写真2)。本技術を利用したユーカリの産業植林での実用化は世界初(当社調べ)で、その取組み内容について今回の学会発表で紹介します。

近年、地球温暖化対策の一環として、森林の持つCO2吸収・固定機能が注目されています。当社は、計画的な植栽、保育、伐採利用という持続可能な森林資源の循環に取組んでいますが、森林の単位面積当たりの生産性のさらなる向上を目指し、AMCEL社で効果が証明された独自技術※5を広く展開していきます。当社グループは森林資源の循環に加え、木質資源の多種多様な活用と積極的な製品リサイクルで、カーボンニュートラルな社会の実現に貢献していきます。

◆森林遺伝育種学会第12回大会

1.期 日: 2023年11月10日(金)午後

2.主 催: 森林遺伝育種学会

3.場 所: 東京大学弥生講堂

◆当社発表内容について

タイトル:「ゲノミックセレクションによる事業用クローンの開発」

講演者: 新屋 智崇(日本製紙 研究開発本部 基盤技術研究所 森林資源研究室)

※1 ゲノム情報を利用した選抜育種技術(ゲノミックセレクション):ゲノム情報とユーカリの特徴(成長や品

質など)を数値化し、ビッグデータ解析により将来の特徴を予測する形質予測式を作成し、苗の段階で選抜する技術。

※2 AMCEL社:当社100%植林・チップ等生産販売事業会社

・総面積:約30万ha(植栽可能面積 約10万ha、実植栽面積 約5.8万ha)

・チップ生産量:約50万BDT/年 

※3 森林蓄積量:森林を構成する樹木の幹の体積

※4 CO2吸収・固定効率:単位面積あたりのCO2吸収・固定量

※5 植林地生産性向上のための技術開発について(概要は以下URLからご参照ください)https://www.nipponpapergroup.com/research/organize/plant/index.html 


以上