ニュースリリース経済産業省「排出削減が困難な産業におけるエネルギー・製造プロセス転換支援事業」に採択~石巻工場GHG排出量大幅削減によるバイオマス製品競争力強化事業~

日本製紙株式会社

日本製紙株式会社(代表取締役社長:野沢徹、本社:東京都千代田区、以下「当社」)は、2030ビジョンにおいて「GHG排出量2013年度比54%削減※1」を掲げ、燃料転換、省エネルギー、生産体制再編成の推進などによるGHG排出量削減に取り組んでいます。
この達成に向け、当社は石巻工場(宮城県)での燃料転換について、GX経済移行債を活用した政府による支援事業「排出削減が困難な産業におけるエネルギー・製造プロセス転換支援事業(事業Ⅱ(化学・紙パルプ・セメント等))」に応募し、以降に示す戦略を着実に実行していくことを前提として、本日(2025年1月21日)採択されました。今後、社内決裁プロセスを経て、補助金交付の手続きを進めていきます。

当社は、持続可能資源である木材を原材料とした化学パルプから紙・板紙などの生活必需品を社会に提供していますが、2050年カーボンニュートラルに向かって、脱炭素と経済成長を同時実現(GX)するために、化学パルプから新たなバイオマス素材を生み出す「バイオリファイナリー構想」を掲げ、事業構造転換を進めています。

すでに、レーヨンなどの原料である溶解パルプ、食品添加物や需要拡大が見込まれる車載用リチウムイオンバッテリー部材に使用される機能性セルロース、コンクリート用混和剤、飼料・有機質肥料に使用される高蛋白質含有のトルラ酵母※2など、当社は幅広い分野で木材由来のバイオマス素材を供給しています。これら食品、化粧品、土木など各種工業用原料分野でのバイオマス素材の売上高は約200億円に達していますが、カーボンニュートラル社会における当社の役割として、「バイオリファイナリー構想」を確実に実現し成長していくため、これらに加え新しいバイオマス素材(バイオエタノール、セルロースナノファイバー、バイオコンポジットなど)の開発・事業化を進めていきます。
このうち、セルロースナノファイバーについては、国内2か所の製造拠点を設置し、積極的にサンプルワークを進めてきたことで販売量は着実に増加しています。海外市場においても、衛生材料、化粧品分野での販売を開始しており、国内外でバイオリファイナリー構想の実現を進めています。また持続可能な航空燃料(SAF)や自動車燃料、グリーンケミカル原料として需要拡大が見込まれるバイオエタノールについては、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)「バイオものづくり革命推進事業」の実施予定先として採択されており、製造技術を確立した上で、事業環境を見極めながら年産数万kLでのスケール化を目指しています。

※1 エネルギー事業分野を除く製品製造に関わる排出

※2 黒液に含まれるヘミセルロースの糖源を栄養源として培養


<石巻工場でのGHG排出量の大幅な削減計画>

当社は、東北地区でこのバイオリファイナリー構想の強化を目指します。すでに石巻工場に国内最大規模のセルロースナノファイバー製造設備を設置していますが、今回、この支援事業を活用した燃料転換投資によってバイオリファイナリー構想の基盤を確立します。
石巻工場では、木材から化学パルプを製造する時に副生される黒液(こくえき:バイオマス燃料)を「黒液回収ボイラー」で燃焼し、エネルギーとして利用していますが、紙の乾燥には多量の蒸気を必要とするため、石炭ボイラーも使用しています。今回、高効率な黒液回収ボイラーを設置して石炭ボイラー1台を停機し、石炭から黒液に燃料を転換することで、GHG排出量を大幅に削減します。

<石巻工場におけるバイオリファイナリー構想の強化>

現在、様々な市場で機能、品質に加え、ライフサイクルGHG排出量(LC-GHG)の少ない製品・サービスが求められています。当社も最終製品メーカーであるブランドオーナーとの共同開発や新規顧客開拓における重要な評価軸として、LC-GHGを採用し、その低減に取り組んでいます。
今回の燃料転換投資とともに、新しいバイオマス素材だけでなく、既存製品である紙、家庭紙においても、さらなるLC-GHGの低減や、ブランドオーナーと協働でLC-GHGの「見える化」を実行します。グリーン製品をBtoB、BtoCの両面において訴求し、市場獲得に積極的に取り組んでいきます。
今後、石巻工場では、この燃料転換を契機にグリーン製品の製造拠点として、既存紙製品のグリーン化を積極的に進めるとともに、バイオリファイナリー事業の拡大を目指していきます。石巻工場での成果を他の国内工場や海外拠点にも展開することで、国際競争力を強化し、今後のグリーン製品市場における確固たる地位を築き、2030ビジョンで掲げる新規事業での売上高650億円達成に向けた柱の1つとしていきます。

気候変動や資源枯渇などの社会課題の解決策の一つとして、バイオマス素材の需要は大きく拡大していくと予測されますが、サプライチェーン強靭化のために、原材料となる木質資源の安定確保は、重要な課題です。当社は、紙づくりの歴史の中で、林業従事者、チップ生産事業者、製材事業者などと協働し、国内外で森林の育成・管理、調達に深く関わってきました。特に、国産材では、各地方において、木を「伐って」「使って」「植えて」「育てる」の活動を通じて、林業の活性化に貢献しています。資源自律の点からもサプライチェーンの強靭化は、重要な課題であり、当社は引き続きサプライチェーンの上流側を支える役割を担うと同時に、化学パルプから機能的かつ環境配慮に優れた高付加価値なバイオマス素材を生み出す「レイヤーマスター」としてGX市場の確立・拡大に貢献していきます。

■ 石巻工場での設備投資計画の概要

設置場所 日本製紙(株)石巻工場

投資規模 555億円(うち政府支援上限額:183億円)

投資内容 高効率黒液回収ボイラー 蒸発量 375~390t/h
                 蒸気タービン・発電機    発電量   56~58MW

GHG排出量削減*1 50万t-CO2e(79万4千t-CO2e → 29万4千t-CO2e)

当社排出量*2の10%

稼働開始 2028年度 第4四半期

*1既存石炭ボイラーの停機による削減効果を含む

*2製品製造に関わるScope1およびScope2排出量

以上