ニュースリリース国内初、木質由来のリグニンを用いた「常温アスファルト混合物用乳剤」を共同開発~耐久性で加熱アスファルト混合物と遜色のない常温アスファルト乳剤混合物の実用化に成功~

東亜道路工業株式会社
日本製紙株式会社

東亜道路工業株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:森下協一、以下「東亜道路工業」)と日本製紙株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:野沢徹、以下「日本製紙」)は、日本製紙の特殊変性リグニン製品「StarLigno®(スターリグノ)」を採用した「常温アスファルト混合物用乳剤」を共同開発しました。
本製品は、常温アスファルト乳剤混合物でありながら一般道路に適用できる革新的な製品です。


従来から、道路工事では耐久性や施工性が高い加熱アスファルト混合物が舗装材料として使用されていました。しかし、加熱アスファルト混合物は約180度の高温で加熱溶融したアスファルトを凝固させないよう高温状態を維持したままで製造・施工する必要があり、省力化、コスト削減や低炭素化実現のため、加熱しない常温アスファルト混合物への転換が検討されていました。

常温アスファルト乳剤混合物は、アスファルト乳剤などを結合剤として使用することで製造・輸送・施工時の加熱工程が不要となり、通常の加熱アスファルト混合物に比べCO2の発生量を大幅に低減できる技術として期待されています。また、近年の酷暑時における舗設時の作業環境改善に寄与します。

その一方、従来の常温アスファルト乳剤混合物は、乳剤の安定性や保管時の管理が難しいことに加え、施工後の強度発現に時間を要する等の課題があることから、補修や簡易舗装等にしか使用されていませんでした。

この課題に対し、東亜道路工業は日本製紙が新規に開発した特殊変性リグニン「StarLigno®(スターリグノ®)」を採用することで、加熱アスファルト混合物と遜色のない常温アスファルト乳剤混合物を製造する「常温アスファルト混合物用乳剤」の開発に成功しました。

今後の活用用途としては、加熱設備のある製造装置や施工時の加熱作業の必要がないため、インフラの整っていない国外の島嶼部や未舗装地域などでも施工が可能であるとともに、被災等によって現地インフラが機能しない災害復旧時にも適応できることから、緊急復旧の資材としても大いに期待されています。


<東亜道路工業株式会社>

東亜道路工業は、国内で初めてアスファルト乳剤を製造・販売する会社として1930年の創立以来、「自らの意思と成長をもって人々の生活を足元から支える」という企業理念のもと、道路舗装材料メーカーの顔を持ちながら、道路建設などのスペシャリストとして日本のインフラ整備に携わってきました。


<日本製紙株式会社>

これまで日本製紙は、国内唯一のサルファイトリグニンを有する総合リグニンメーカーとして、1937年来その優れた特性を生かした各種リグニン製品を開発し時代のニーズに応じて市場に供給してきました。

※参考 アスファルト混合物各施工方法比較



※「常温アスファルト混合物用乳剤」は、2024年11月に茨城県つくば市内の東亜道路工業(株)茨城支店敷地内において近隣自治体の道路管理者へ向けた試験施工を実施し、良好な結果を得ております。

また、現在、一般財団法人 国土技術研究センターの実施する広域安定供給可能なアスファルト舗装技術に関する公募において、「超広域運搬が可能なアスファルト乳剤混合物」の施工および供用性データを取得する追跡調査を実施中です。

※供用性データ:道路舗装の損傷具合を示すひび割れ率、わだち掘れ量、平たん性


※リグニンとは

木材の主要成分の一つである「リグニン」は、木材中の繊維同士を接着させる役割を果たし、セルロースに次いで木材の1/4~1/3を占める再生可能な高分子資源です。


※特殊変性リグニン「StarLigno®(スターリグノ®)」とは

既存のリグニン製品と比べ、土木・建築材料や染料など各種物質を水分散させる際の分散性能や増粘性能に優れ、分散させたスラリーの性状や特性を任意に変化させることが可能となりました。また使用分野によっては、石油由来の合成系高分子に匹敵する分散性を有します。


※サルファイトリグニンとは

サルファイト蒸解パルプ生産の際に産出されるリグニンで、本来水に溶解しない「リグニン」が水に溶ける「サルファイトリグニン(リグニンスルホン酸塩)」になることでパルプとの分離が容易になります。リグニンに水へ溶解する能力が付加される為、疎水性、親水性両方の性質を持ち、水系の分散剤、界面活性剤として利用されています。

*サルファイト蒸解パルプは「溶解パルプ」として、酢酸セルロースをはじめ、衣料(レーヨン)やセロファンの材料として利用されています。




以上