人権と雇用・労働に関わる責任活力ある組織づくり

基本的人権と個性の尊重を基本に、新卒採用を継続するとともに女性や障がい者、高齢者の積極的な活用に取り組んでいます。

基本的な考え方

多様な人材が能力を発揮する活力ある組織を目指します

個性の異なる従業員同士が刺激し合い知見を深め合うことは、職場の活力向上にもつながります。少子化にともない労働人口の減少が予想されるなか、多様な人材を活かすことは企業の持続的発展にとっても重要です。日本製紙グループは、2015年に明文化した企業グループ理念で「Challenge、Fairness、Teamwork」を重視する価値とし、活力ある組織を目指しています。

雇用、採用の状況

差別のない新規採用の継続に努めています

日本製紙グループは、国内外で約1万3千人の従業員を雇用しており、企業活動の基盤となる地域社会への責任として、雇用の安定および新規採用の継続に努めています。
また、「人権と雇用・労働に関する理念と基本方針」に基づき、差別のない雇用・採用に努めています。選考過程では、試験や面接などを判断材料とし、国籍・出身地・性別・学校名などによる選別は行っていません。

障がい者雇用の拡充と今後の対応

日本製紙(株)の2017年4月1日時点の障がい者雇用率は1.92%と、目標としていた障がい者雇用率2.0%を達成できませんでした。2017年度は、従来以上に各自治体や団体が主催する採用面接会などに積極的に参加し、2018年4月1日時点の障がい者雇用率は2.17%となりました。
ただし、障がい者の法定雇用率は2018年度から2.2%に引き上げられ、今後も引き上げが続く予定です。引き続き各拠点で行動計画を策定し、雇用を確実に促進していきます。

障がい者雇用率の推移(各年4月1日時点)

高齢者雇用の促進

日本製紙グループでは、超高齢社会への対応と技能継承を目的に、従来から高齢者雇用制度を設けています。
日本製紙(株)では、最長65歳までの再雇用制度を2002年度から運用しています。2013年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法に対応し、定年を迎えた従業員が、意欲と能力に応じて少なくとも年金受給開始年齢までは働き続けられるよう、再雇用規定の整備を図りました。

ワークライフバランスの推進

仕事と家庭の両立を支援しています

日本製紙グループでは、従業員一人ひとりが能力を十分に発揮できるよう、仕事と家庭を両立できる働きやすい環境づくりを進めています。
例えば、日本製紙(株)では、本社・研究所・営業支社・工場事務部門などでフレックスタイム制を導入しています。

働き方改革に向けた取り組み

日本製紙(株)では従業員がいきいきと働ける職場環境を整備するための「働き方改革」の取り組みとして、総労働時間の短縮を推進しています。従業員一人ひとりがワークライフバランスを保つことで、そこで生み出される時間・余力を会社のさらなる成長にもつなげていくことができると考えています。

総労働時間短縮の推進

日本製紙(株)は、全従業員の年間の平均総労働時間を1,850時間未満にするという目標を設定しました。取り組みの前提として労働時間をより正確に把握・管理するため、管理職を含めた全従業員の勤務表管理システムにパソコンの起動・終了時刻と連動する機能を追加しました。また、半日単位年休取得回数の上限撤廃やフレックスタイム制度におけるフレキシブルタイムの変更など、人事制度の見直しや試験的運用も行いました。
2017年度における全従業員の平均総労働時間は約1,927時間でした。今後、総労働時間の短縮に向け、現状の取り組みに加え、各職場における業務プロセスの見直しを推進していきます。

「次世代育成支援対策推進法」への対応

日本製紙グループでは「次世代育成支援対策推進法」に基づいた行動計画を2016年4月に改訂し、従業員の仕事と育児の両立を支援しています。
例えば日本製紙(株)では、所定外労働の免除期間や育児時間取得の適用期間、子を養育するために使用できる保存休暇適用期間の延長など、育児・介護休業法が求める措置を上回る制度を運用しています。これらの活動により、厚生労働大臣から「子育てサポート企業」に認定され、次世代認定マーク「くるみん」を取得しています。

「次世代育成支援対策推進法」に対応した行動計画
(日本製紙(株):2016年4月改訂)
  1. 1.「ゆとりある職場づくり」を推進し、年間総労働時間の削減を図る。
  2. 2.男性の育児参加を推進するため、育児に関連する制度の見直しを実施する。

女性の活躍

女性が活躍できる環境を整備しています

組織の活性化や少子化社会での人材確保の観点からも、女性の活躍というテーマの重要性が増しています。

事例

ダイバーシティ勉強会の開催(日本製紙(株))

第23回全社発表大会の最優秀チーム

ダイバーシティマネジメント勉強会

日本製紙(株)は、第2回ダイバーシティマネジメント勉強会を2017年9月に開催しました。
勉強会は2部制で行い、第1部ではCSR部と人事部人材企画室から世の中の潮流と当社における女性活躍の取り組みについて紹介しました。第2部では(株)東レ経営研究所の宮原淳二氏、富士ゼロックス(株)の萩原留美氏、(株)富士ゼロックス総合教育研究所の田辺純氏を講師として迎え、今後、従来のような時間的制約が少ない社員だけではなく、育児や介護、病気の治療などによる時間的制約のある社員の活躍が必要な時代となること、そのためには限られた時間で成果を挙げる「働き方改革」や、さまざまなバックグラウンド・価値観を尊重するマネジメントが必要なことなどをお話しいただきました。当日は約100人の従業員が参加し、参加者同士による活発なディスカッションも行われました。

「 女性活躍推進法」への対応

日本製紙(株)では、「女性活躍推進法」に基づいた行動計画を2016年4月に策定し、女性が活躍できる環境整備とその実現に取り組んでいます。

「女性活躍推進法」に対応した行動計画
(日本製紙(株)2016年4月策定)
  1. 1.女性総合職の新卒採用比率を25%以上とする。
  2. 2.8事業年度から12事業年度前に採用された女性総合職の平均継続雇用比率を男性の0.8以上とする。
  3. 3.生産拠点において女性の職域を拡大するため、各職場に女性を配置する場合の課題を洗い出すとともに、課題に対する対応策を検討し、女性を配置する職場の具体的計画を策定する。
  • 2004年度入社から2008年度入社

女性管理職、採用

管理職に占める女性の比率は下図の通り低い状況です。日本製紙(株)では操業現場での勤務も多く、女性採用数そのものが少なかったことが大きな理由です。現在では、女性の配属職場の拡大に取り組み、2020年度までに女性管理職を倍増させることを目指しています。

女性管理職比率の推移
2013年度から、過去に遡って参与・参事・理事・嘱託・受入出向者を除く正規従業員に
占める比率に統一しました

※1 日本製紙グループ(国内)は国内の連結会社の集計値
※2 12月末現在、課長・部長など課以上の組織単位の長を対象


女性総合職ネットワーク

女性総合職ネットワーク体制
女性総合職ネットワーク体制

日本製紙(株)では、職場の枠を越えた全社横断的な女性総合職ネットワークを構築し、ネットワークリーダーが人材企画室と連携して、キャリア形成におけるメンバーの悩みをフォローしています。2015年11月から2年間の第1期のグループ活動では、女性が活躍する上での課題を挙げ、今後必要性が増すと思われる制度などについて提言を行いました。2018年1月から第2期のグループ活動に取り組んでいます。
さらに、女性総合職と直属の上司がキャリア形成の課題を共有するためのキャリア研修を実施しています。

人材育成の取り組み

従業員が能力を向上・発揮できるよう支援をしています

人材育成については、従業員に公平な学習機会を提供した上で、意欲と能力のある人が一層スキルアップできる仕組みを、次の5つに重点を置いて整備しています。

人材育成における5つの重点
  1. (1)自己啓発と自律的な能力開発の支援
  2. (2)適材適所の人員配置
  3. (3)グローバル人材の育成
  4. (4)現場力の強化
  5. (5)キャリア設計・生涯生活設計の支援

(1)自己啓発と自律的な能力開発の支援

社内研修

社内研修

日本製紙グループでは、通信教育・集合研修・資格取得奨励制度などを通じて、従業員の自律的な能力開発を支援しています。新入社員研修や新任管理職研修などの階層別教育もグループで共催するなど、グループ横断的な人材育成に取り組んでいます。工場における階層別教育も近隣工場と共催するなど、それぞれの事業所にとどまることなく広い視野を持った人材育成に取り組んでいます。
また、一人ひとりが自ら必要なスキルを選んで学べる能動的な学習機会として、約280講座の通信教育や、選択型集合研修もグループに展開し共催しています。各人が自主的に受講できることに加え、集合研修ではグループ他社の従業員と刺激を与え合う貴重な場となっています。

従業員一人当たりの研修時間(国内連結会社)

6.8時間/年

(2)適材適所の人員配置

日本製紙(株)では、従業員への「業務・人事希望調査」を定期的に実施。調査結果に基づいて一人ひとりの志向を考慮しながら、適性と職種とのマッチングを図っています。
このほか、日本製紙グループ各社からの社内求人に対して各人が自己のスキル、今後のキャリアを考え自ら応募する仕組みとして「人材公募制度」を導入しています。

(3)グローバル人材の育成

今後の海外展開を見据えてグローバルな視野を持った人材を育成していくために、日本製紙(株)などで公募制の海外留学制度を整備しています。海外の大学への留学生派遣制度と、当社グループに関連する海外事業所への派遣制度などを運用しています。また、日本製紙(株)では、総合職の全員がグローバル人材として活躍できるよう、意識付けと教育の強化を図っています。

事例

海外企業派遣コース制度(日本製紙(株))

第23回全社発表大会の最優秀チーム

派遣先(オーストラリアンペーパー)

海外で活躍できる人材の育成を目的に、技術系総合職を対象とした海外派遣制度を導入しています。派遣者は、北米やオーストラリアなどの海外拠点で1年半にわたって語学力向上に取り組みながら、現地企業での実務を経験します。海外で暮らし働くことで異国文化と生活を理解し、スキルアップに努めるとともに今後グローバル人材としてキャリアアップする上での意識を高めています。



グローバルに小集団活動を展開

第23回全社発表大会の最優秀チーム

第25回全社発表大会の最優秀チーム

日本製紙グループでは、国内外で小集団活動を実施しています。この活動では数人でグループをつくり、業務改善や品質改善、費用削減などに取り組みます。2017年度は日本製紙(株)で第25回全社発表大会を、当社グループで国内外12社による第9回発表会を開催しました。各職場の業務への理解を深めるとともに、他の職場や海外の良い事例を共有する機会となっています。

(4)現場力の強化

ものづくりの原点は現場にあります。特に製造業では、現場を中心として長年にわたって培われてきた技術・技能を確実に継承し、人の力を維持・強化していく必要があります。
日本製紙(株)では、2006年度から推進組織を設けて「現場力」の強化に全工場で取り組んでいます。各現場で継承すべき技術・技能を網羅し、各人の強みや習得・強化すべき点を分析して重点的に教育するという仕組みを整え、運用しています。

(5)キャリア設計・生涯生活設計の支援

公的年金支給開始年齢の引き上げや確定拠出年金制度の導入、ライフスタイルの多様化など、近年、従業員がキャリア設計や生涯生活設計をする上で考慮すべき要素が増えています。こうしたなかで、日本製紙グループの主要会社では、会社の諸制度や公的制度、生き甲斐探索、健康管理などについて理解を促す「ライフプラン研修」や各種セミナーを実施しています。

公正な評価・処遇

能力や成果に応じて従業員を公正に評価しています

日本製紙(株)では、公正かつ透明な人事考課の一環として、評価基準を明示するほか、一般従業員全員を対象に、評価内容について上司が本人にフィードバックする面談を実施しています。面談によって人事考課への納得性を高めるとともに、各人の能力開発の指針としています。また、管理職への登用・昇格審査などにおいては、社外専門会社によるアセスメント(評価)を導入し、評価の客観性を高めています。

労使関係

労使間の合意に基づいて労働環境の改善に取り組んでいます

日本製紙グループでは、健全な労使関係の維持・強化に努めており、日本製紙(株)および大半の連結子会社において労働組合が結成されています。また、労働組合のない会社でも円満な労使関係が保たれています。
例えば、日本製紙(株)では、「より良い会社にする」という労使共通の目標のもと、「協約運営専門委員会」「要員対策専門委員会」などの各種労使専門委員会を設置し、お互いの立場を尊重した真摯な協議を重ねています。そして、労使間の合意に基づいて各種施策や労働環境改善に取り組んでいます。また、定期的に開催する「中央労使協議会」では、経営に関することから労働条件まで多様な事項について労使幹部で協議しています。
なお、日本製紙(株)の労働組合員数は4,688人(2018年3月末時点)です。ユニオンショップ制を採用しており、団体交渉による協定の対象となる従業員は100%労働組合に加入しています。

労働条件に関する協議について

制度改定や要員合理化など労働条件の変更は、事前に労使で協議し、議論を尽くした後に実施しています。会社が従業員に対して一方的に変更を強いることはありません。
会社の施策について従業員の理解を得るには、日常的なコミュニケーションも大切です。日本製紙グループでは、決算状況の説明をはじめとして、日頃から労働組合や従業員への情報提供を行い、話し合いの機会を設けるよう努めています。