森林経営・原材料調達に関わる責任国内木質資源の保護、育成

森林の健全な生育を促すために全国各地で地域の特性に応じた森林管理を続けています。

国内社有林の持続可能な森林経営

総面積9万ヘクタールに及ぶ社有林で持続可能な森林経営を実践しています

日本製紙(株)は、民間では全国第2位の森林所有者で、国内に約400カ所、総面積約9万ヘクタールの社有林を保有しており、その全てでSGEC森林認証を取得しています。
日本製紙グループにとって、森林は経営資源として重要な意味を持つ一方、木とともに未来を拓く企業として、森林の多面的な機能を認識しその維持に努めています。

国内社有林の整備

間伐作業(静岡県北山社有林)
間伐作業(静岡県北山社有林)

下刈りや間伐の実施など国内社有林の維持・管理に年間約7億円を費やしています。国産材価格が低迷するなかで、採算的には厳しい状況ですが、森の恵みである木材を利用することで存続・発展してきた企業として、森林の生物多様性保全や水源涵養など多面的な機能を十分に発揮できる、バランスの取れた持続可能な森林経営に努めています。

環境林分の設定など生物多様性に配慮した森林経営

環境林分を有する菅沼社有林(日光白根山)
環境林分を有する菅沼社有林(日光白根山)

日本製紙(株)は国内社有林を、木材生産を行う「経営林分」と、木材生産を行わず生態系・水源涵養などの環境機能を保全する「環境林分」に区分し、それぞれの目的に応じて適切に管理しています。環境林分は、国内社有林の約20%にあたる1.8万ヘクタールに及び、多くの生物の営みの場となっています。

日本製紙(株)の国内社有林分布と種別構成
間伐に寄与する「森の町内会」の仕組み

国内林業の活性化

国産材を積極的に活用し森林の荒廃防止に貢献します

日本では近年、全国各地でスギ・ヒノキなどの人工林の荒廃が懸念されています。木材価格の低迷から林業の採算性が悪化し、間伐などの適切な手入れができなくなっていることがその要因です。林業を活性化させて森林の荒廃を防ぐため、日本政府は「森林・林業基本計画」で2025年までに木材自給率50%を達成するという目標で、国産材の振興策を進めています。

国産材の活用を推進

日本製紙木材(株)では国内での国産材集荷網をベースに、製材用の良材から製紙用チップ原料や木質燃料などの下級材までを取り扱える強みを活かして、積極的に国産材のビジネスを展開。2017年度の国産材取扱量は、国内第2位にあたる約93万m3となりました。「国産材の取扱量年間100万m3」の目標達成に向け、引き続き国産材の活用に向けた新たな用途開発や輸出などに取り組んでいます。


国産材の品種別販売実績
(日本製紙木材(株))

製紙原料における取り組み

日本製紙(株)は、製紙原料における国産材比率の向上に取り組んでいます。2008年度には30%に達し、2017年度の利用率は36.1%となっています。今後も国産材を積極的に活用し、国内林業の活性化に貢献していきます。


国産材利用率※1の推移(日本製紙(株))
    ※1 国産材利用率は、国内製材所の廃材チップを含めて計算
    ※2 経済産業省「紙・パルプ統計年報」より
    ※3 林野庁「木材需給表」(用材の自給率)より

官民連携による施業団地化の取り組み

国内林業の競争力を高めるには、森林所有者が個別に施業するのではなく、近隣の森林所有者と連携して路網整備や伐採などの作業、獣害対策を行うことが必要です。
日本製紙(株)は、2011年から九州森林管理局、王子木材緑化(株)、住友林業(株)などと「五木地域森林整備推進協定」を結んで以降、九州地区の計4地区で協定を結び、官民が連携した森林整備を目指しています。
また、静岡県では2016年に林野庁関東森林管理局静岡森林管理署、静岡県富士農林事務所、富士宮市などと「富士山西麓地域森林整備推進協定」を結び、施業団地化による作業の集約効果のモデル事業として実施しています。

事例

スギ特定母樹の苗生産

静岡県富士山世界遺産センターに北山社有林のSGEC森林認証材を供給

ふくしま復興応援卓上カレンダー

スギ特定母樹の挿し木苗

日本製紙(株)は海外植林事業で培った挿し木苗増殖技術を応用し、九州地区でスギ特定母樹の苗を生産しています。全国各地で主伐・再造林の拡大が見込まれるなか、国は、環境に配慮した品種の積極的な利用を推進しています。当社は10cm程度の小さな枝からでも挿し木ができる技術を確立(通常は、40cm程度を利用)し、短期間で大量のスギ特定母樹の生産が可能となりました。現在、熊本県人吉市に大規模な採穂園を造成し、スギ特定母樹の苗生産を進めています。
全国的に苗木不足が懸念されるなか、当社のこうした苗木生産技術を全国各地に展開して、苗生産に取り組むことで、苗木の安定供給、国内林業の成長産業化にも寄与していきます。

    スギ特定母樹:
    成長性が良いことでCO2吸収固定能力に優れ、かつ花粉量が少ないなどの特徴を持ち、農水大臣により指定された品種

事例

静岡県富士山世界遺産センターに北山社有林のSGEC森林認証材を供給

ふくしま復興応援卓上カレンダー

静岡県富士山世界遺産センター

2018年1月、日本製紙(株)と日本製紙木材(株)は、日本製紙(株)が所有する北山社有林(静岡県富士宮市)のSGEC森林認証材(ヒノキ)を、静岡県富士山世界遺産センターの展示棟木格子プロジェクトに供給しました。
静岡県富士山世界遺産センターは、建材に静岡県産のヒノキを使用しており、なかでも展示棟の内外壁に使った木格子は全てSGEC森林認証材です。このことから、地域協働、および林業、加工・流通、建築などの異業種間連携により、同センターは国内で初めて「SGEC/PEFC CoCプロジェクト認証」を取得しています。
北山社有林は、SGECの森林認証を日本で初めて取得した第1号認証林です。国内で初めてSGECのCoC認証を取得した日本製紙木材(株)が施業管理を担当し、同社の流通における分別管理により、SGEC森林認証材を山元から建築物までつなげることができました。